うつ病の労災認定基準について(その2 請求・調査編)

質問

仕事が原因でうつ病を発症したので労災申請しようと思っているのですが、どのように請求したらよいのでしょうか。
また、労災申請後にどのような調査が行われ、決定までにどのくらい時間がかかるのでしょうか。

答え

労災申請は一般的なけがと同様で、治療費や通院費、休業補償などの請求書を提出します。
調査については、本人からの聴き取り調査、上司や同僚などの会社関係者や親族などからの聴き取り調査、主治医からの医学的な確認調査などがおこなわれています。
調査期間についてはケースバイケースのようですが、平均で6ヶ月間くらいのようです。

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下でくわしくお話するよ!

うつ病などの精神障害における労災認定基準の概要については、うつ病の労災認定基準について(その1 概要編)でもお話していますので、あわせてご覧ください。

うつ病の労災申請方法

うつ病の労災認定基準、調査期間

うつ病などの精神障害の労災申請は、けがをして労災請求するときなどと同じで、病院代やくすり代などの「治療費」、通院するための「交通費」、仕事を休んでいるなら「休業補償」の請求書を作成し、提出することが必要になります。

労災申請に必要な書類や手続きの流れなどについては、こちらを参考にしてください。

うつ病などの精神障害の労災認定基準を再確認!

労災保険の精神障害の認定基準は以下のとおりです。

  1. 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
  2. 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
  3. 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

労災申請後の調査について

うつ病などの精神障害を発病し労災保険に請求をした場合、上記の労災認定基準に沿って労働基準監督署で調査が行われることになります。

  1. まず初めに、認定基準の対象となる精神障害(傷病名)が決められていますので、その中に該当する傷病名かどうかが判断されます。
  2. 1で該当する傷病名であった場合、その精神障害を発病する前おおむね6ヶ月の間に、精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められるかどうかについて判断されることになります。
  3. さらに、業務以外による心理的負荷や個体側要因によって、その精神障害を発病したものではないかが検討されることになります。

具体的にどんな調査が行われるのか

うつ病などの精神障害の場合、実際に労働基準監督署でどういった調査が行われているのでしょうか。

主に本人や上司や同僚などの会社関係者、ご家族などからの「聴き取り調査」がメインになっています。

うつ病の発病前おおむね6ヶ月の間に、仕事上で起こったストレスを生じる可能性がある出来事があったかどうか、あった場合、その内容やその出来事の後の状況などについて、本人からの詳細な聴き取り調査がおこなわれるほか、相手方などの当時者や、上司や同僚などの会社関係者からも同様に聴き取り調査が行われます。

また同時に、仕事以外のストレスや個体側要因がある場合は、家族や両親などからも聴き取り調査がおこなわれ、その内容についても検討がおこなわれます。

そのほかにも、医学的な部分の確認のために、主治医に対しても確認調査が行われ、これらを総合的に判断され、労災保険から給付がなされるかどうかが決定されることになります。

調査にかかる期間は?

うつ病などの調査は、どのくらいの時間がかかってしまうのでしょうか。

労働基準監督署に確認してみました。事案によって内容が異なるので一概には言えないとのことでしたが、請求から決定まで平均で6ヶ月間くらいかかっているとのことでした。あくまで平均ですから、早期に終わるものもあれば、長いものだと1年以上になってしまうものまであるようです。

なにか良い方法はある!?

労災になるかどうか決定するまで平均で6ヶ月間なんて正直長過ぎます。働ける場合はまだいいですが、うつ病の場合、医師から休業を指示されることも多いです。働くことができない場合、収入がなくて困りますよね?

では、うつ病で労災申請した場合、なにか良い方法はないのでしょうか。

基本は決定されるまで待つしかないということになるのですが、それでもできることはあります。それは、

  1. 決定されるまでは労災保険への請求は最小限にする
  2. 傷病手当金を請求してみる
  3. 相談サポートを活用する

ということです。

決定されるまでは労災保険への請求は最小限にする

これは、決定されるまではできるだけ手間を省くという意味です。うつ病などの精神障害の労災認定率は高くなく、厚生労働省の統計によると、令和3年度最新の精神障害の認定率は32.2%です)、反対にいえば、不支給決定される可能性も高いということです。

労災申請するときに、病院代やくすり代を労災保険に切り替えて請求していたとしても、結果、不支給になってしまえばそのすべてが無駄になり、一から健康保険に請求し直さなければならないなど、最初から手続きがやり直しになってしまい、トータルでの手間が増えてしまいます。

うつ病などの精神障害の労災保険への請求は、できれば移送費の請求などのかんたんにできるもの1つだけにして、労災と認定された後にそのほかの労災請求をするというのが一番手間がかからない方法といえます。

傷病手当金を請求してみる

労災保険と健康保険は相反するものであることから、二重に支給を受けることはできません。しかし、労災保険の調査期間中は労災保険が決定されたわけではないことから、健康保険の傷病手当金を請求すれば受給できる場合があります。

もちろん、最終的に労災が決定になった場合は返還する必要がありますが、労災が決定されるまでの生活費の繋ぎにはなりますし、仮に労災にならなかった場合でも健康保険の取り扱いになりますから、そのまま受給し続けることも可能です(最長1年半)。

相談サポートを活用する

うつ病などの精神疾患関連で労災申請する場合は、提出しなければならない書類がかなり多くなります。ご自分やご家族だけでは、なかなか難しいケースもあるかもしれません。

そんなときは、社会保険労務士や弁護士に依頼して書類を作成してもらい、少しでも負担を軽減するということも一つの手です。それ以外にも、労災請求を有利に進めることができる可能性も高くなります。

まずは、無料で相談ができる相談さぽーとに相談してみることをおすすめします。「だめだと思ったのに支払われた!」「相談してよかった!」などの声も多く寄せられていますので、あきらめずに労災請求しましょう。

うつ病などの精神障害の労災認定については、こちらの記事も参考にしてみてください。

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