下でくわしくお話するよ!
労災保険料を増減するメリット制とは
メリット制とは、一定の要件を満たす事業について、労働災害による保険給付の多寡(多い・少ない)により、一定範囲内で労災保険料率を増減させる制度です。
メリット制の適用の事業は、災害が少ない場合は労災保険料が減額になり、反対に災害が多い事業は保険料が上がることになり、これにより同一業種の事業間の保険料負担の具体的公平が図られています。
ただし、この保険料を増減する「メリット制」はすべての事業に適用されるわけではありません。
一定の要件を満たす個々の事業に適用される制度ですので、メリット制の適用になっていない事業については保険料の増減はありません。
では、どういった事業がメリット制の適用になるのかを説明していきたいと思います。
メリット制の適用となる事業
メリット制が適用される基準は、「継続事業」「一括有期事業」「単独有期事業」により異なりますが、どれも「規模が大きめな事業」がメリット制の適用になるといえます。
❏継続事業の場合
継続事業とは、一般の工場、商店、事務所などの事業期間が予定されていない事業のことをいいます。
継続事業のメリット適用要件
- 100人以上の労働者を使用した事業であること。
- 20人以上100人未満の労働者を使用した事業であって、災害度係数が0.4以上であること。
災害度係数 = 労働者数 × (業種ごとの労災保険率 - 非災害業務率) ≧ 0.4
※上記1か2のどちらかを満たす場合にメリット適用
上記2の要件については業種別の早見表がありますのでご覧ください。
出典厚生労働省のホームページより
継続事業のメリット制の適用の時期はいつ?
上記の適用条件を連続して3年度満たした場合、その翌々年から適用されます。
【令和6年度からメリット適用になる例】
令和2年度 | 令和3年度 | 令和4年度 | 令和5年度 | 令和6年度 |
令和2年度・3年度・4年度と3年度連続で上記の要件を満たせば、令和6年度からメリット制の適用になります。
なお、令和6年度のメリット増減による保険料率も、令和2〜4年度の収支率によって決定されます。
❏一括有期事業の場合
一括有期事業とは、建設業や立木の伐採の事業の中で、一定規模以下の複数の建設工事や伐採事業を年間で一括し、全体を一つの事業とみなして労災保険を適用するものをいいます。
一括有期事業のメリット適用要件
連続する3保険年度中の各保険年度において、確定保険料の額が40万円以上であること。
一括有期事業のメリット制の適用の時期はいつ?
継続事業と同様です。
❏単独有期事業の場合
単独有期事業とは、事業の開始と終了が予定されている大規模な工事などで、その事業単独で労災保険を適用するものをいいます。
単独有期事業のメリット適用要件
次の1、2のいずれかを満たす事業について適用されます。
- 確定保険料の額が40万円以上であること。
- 建設の事業は請負金額(消費税相当額を除く)が1億1千万円以上、また、立木の伐採の事業は素材の生産量が1000㎥以上であること。
単独有期事業のメリット率の計算はどうやるの?
単独有期事業の場合は、継続事業や一括有期事業と違い、継続性がないために年度ごとの計算というわけにはいきません。
単独有期事業の場合は、事業を終了した日から3ヶ月または9ヶ月(給付の状況により変動)を経過した時点までの保険給付額と確定保険料によって収支率が決定されます。それにより後日、最終的な保険料が決定され、差額が発生した場合、保険料の追加納付または還付されることになります(案内は自動的に送られてきます)。
メリット制で保険料はいくらくらい変わるの?
継続事業・一括有期事業・単独有期事業の違いや事業規模などにより基準が異なりますが、おおむねマイナス40%〜プラス40%の範囲内で保険料率を上げ下げすることになります。
詳細はこちら
厚生労働省のホームページ(労災保険のメリット制について)へ
メリット制の適用かどうかはどうやってわかるの?
自分の会社がメリット制の適用になっているかどうか、どうしたらわかるのでしょうか。
メリット制の適用になる事業に対しては、その通知が発送されることになっております。
継続事業、一括有期事業については、毎年、年度更新の時期(6月1日から7月10日まで)にその通知にしたがって保険料を計算し、申告・納付しなければなりません。
単独有期事業については、その事業の労災保険の給付状況などに応じてメリット増減率が計算されることになるため、事業が終わってしばらくしてからメリットの通知書が交付されることになっており、事故がなかった場合などは保険料が還付されることになっています。
労災のメリット制度まとめ
以上のように、メリット制とは労働災害による保険給付の額により保険料を上下させる制度であり、事故が少なければその名のとおり納付する保険料が下がりメリットが受けられますが、事故が多い場合は反対に保険料を多く支払わなければならなくなりますのでデメリットということにもなります。
メリット制の適用を受けない事業(規模が比較的小さい事業など)は、いくら労災を使っても保険料が上がらないという言い方もできるかもしれませんが、反対に事故がなかったとしても保険料が安くなるメリットも受けられませんし、それ以前にもちろん事故がないことに越したことはないと思います。