労災の休業補償ってどんなときにもらえるの?

質問

労災でけがをしてしまい働くことができません。休んでいる間、給料がもらえないので生活できません。労災保険の休業補償はどんなときにもらえますか。

ココがポイント
  • 「仕事中や通勤途中のけがや病気で療養が必要な状態である」
  • 「働くことができない状態である」
  • 「給料をもらっていない」
  • この3つの条件を満たせば4日目から休業補償がもらえます。

こんにちは!『労災保険!一問一答』のHANAです。

『労災の休業補償をもらえる要件とは?』『最初の3日間はどうなるの?』『休業補償の手続方法』についてお話していきます。

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下でくわしくお話するよ!

休業補償の支給条件とは

休業補償がもらえる条件とは

労災保険には、休業(補償)給付というものがあります。

仕事中や通勤途中にけがをしてしまったことで働くことができず、給料がもらえないときに、給料(生活費)の代わりとして支給されるもので、一般的に「休業補償」と呼ばれています。

休業補償には支給条件が決められていて、休業補償をもらうためには次の3つの条件を満たす必要があります。

  1. 仕事中や通勤途中のけがや疾病などにより療養が必要な状態であり、実際に療養をしていること
  2. 働くことができない状態であること
  3. 会社から賃金が支給されないこと

この3つの条件について具体的にお話します。

1.療養のために(働けない)

1つ目の要件として「療養のために」働くことができない状態であることが必要です。

これは、けがや病気に対しての治療(療養)が必要な状態であって、実際に治療をおこなっている(療養を伴っている)ことが必要だということです。

だから、医師から「今日で治療はもう終わりですよ。」と言われれば、その後の治療は必要がない、いわゆる症状固定の状態と判断されますので、休業補償はもらえなくなります。

他にも、本当は病院に行かなければならないのに自分勝手な判断で通院せず、ただ自宅で休んでいるだけのような場合も、療養が伴っているとは言えないことから、休業補償がもらえない可能性が高くなります。

ここでの「療養」とは?

ここでいう「療養」とは、けがなどにより入院している場合や、治療やリハビリのために通院してる場合などのほか、自宅で投薬を受けて療養している場合なども含まれます。

2.働くことができない

休業補償は「働くことができない」からもらえるものです。

ここでいう「働くことができない」とは、必ずしも元の仕事ができない状態をさすわけではなく、「一般的に働けない場合をいう」とされています。

「一般的に働けない場合」とはどういうことなのか。

たとえば、現場作業員がけがをしたとします。現場の激しい作業はできない状態だったとしても、清掃などの軽い作業ができるような状態であるなら、一般的に働ける状態ということがいえますから、実際に休んでいたとしても休業補償がもらえないことが考えられます。

休業補償を請求するときは、請求書の医師証明欄に「働ける状態ではなかったよ」との主治医の証明を受ける必要がありますので、この辺のことは主治医とよく話し合った方が良いかもしれませんね。

ネコ太郎

…ということは、1つ目の「療養している」という条件を満たしていても、一般的に働ける状態まで回復すれば休業補償はストップされるということだから、まだ療養中なのに休業補償がもらえなくなるということもあるということだニャ〜。

3.賃金が支給されない

3つ目の条件として「会社から給料がもらえないとき」があります。これは読んで字のごとく、会社を休んでいる間、賃金をもらえない場合をいいます。

休んでいても会社から給料が支給されている場合や、有給休暇などを取得している場合は休業補償はもらえません

労災保険の休業補償

休業補償は、以上3つの要件を満たした日からカウントし4日目から支給されることになりますが、最初の3日間は「待期期間」といって、労災保険から休業補償はもらえません。

この間については、労働基準法上、業務災害の場合は会社が平均賃金の6割以上を補償しなければならないとなっておりますので、この間については会社から補償を受けることができます。

休業補償の手続きの方法

休業補償の請求方法

休業補償を申請したいときは、休業(補償)給付支給請求書を管轄の労働基準監督署へ提出することで手続きすることができます。

提出する書類

休業補償を手続きするときに提出しなければならない請求書は次のとおりです。

  • 業務災害の場合 休業補償給付支給請求書(様式第8号)
  • 通勤災害の場合 休業給付支給請求書(様式第16号の6)

休業補償の請求書の作成にあたって

請求書の作成には、請求書に事業主の証明や医師の証明が必要になります。請求書の入手方法や作成要領については、下記を参考にしてみてください。

参考
労災8号様式(休業補償)の記入例と書き方を徹底解説
労災保険の請求書(申請書)様式・書類はどこからもらうの?
労災のパンフレット・リーフレット一覧

労災保険は、一度手続きすれば必要な分はすべて給付されるというようにはなっていません。休業補償も、請求する期間ごとに手続き(請求書の提出)が必要になります。

また、休業補償は「この期間、仕事を休みましたので、その分を請求します。」というかたちで事後請求するものです。なので、過ぎた期間について請求するものということになります。「この先1ヶ月の休業見込みだから…」と、未来の分を請求することはできません。

休業期間が1ヶ月半くらいまでであれば、休業後に一度だけ手続きをすれば済むことになりますが、休業が長期にわたる場合は、その間収入がなくなってしまうということになりますので、1ヶ月ごとくらいに区切って請求するというのが一般的になっています。

たとえば、1月分(1月1日から1月31日)を請求するときは2月になってから1月分の請求書を提出する、次の2月分を請求するときは3月になってから2月分の請求書を提出するといった具合です。

困った!休業補償がもらえない!

以上のように、休業補償は休んだ期間について事後に請求することになるため、どうしてももらえるまでに時間がかかってしまいます。

ですが、もしかしたら休業補償がなかなかもらえない理由は他にもあるかもしれません。「休業補償の支給日はいつなんだろう?」「社長が労災を使わせてくれないんだよな…」などの疑問がある場合は、以下の記事も参考にしてみてください。

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コメント

  1. ねぎ より:

    基本的な事で申し訳ありません。
    社員が階段から落下して打撲を負い、労災8号様式を病院に提出したところ、診察担当者の証明が2日間でした。この際は会社が休業補償を負担となるので、8号様式を監督署に提出する必要はないのでしょうか。

  2. HANA HANA より:

    >ねぎ様

    コメントありがとうございます。

    お話の内容だけではなんとも言えないので、もう少しだけくわしく教えていただけますか?

    ①実際に2日間しか休んでいない
    ②実際はもっと休んでいるのに、病院の先生が「2日間しか認めないよ」と言っている
    ③2日目以降、別の病院に転院した
    ④その他

    などなど

  3. ねぎ より:

    HANAさま
    ②が近いイメージです。お伝えするのが難しいですが、この社員(パート)は障害をお持ちで普段から欠勤が多い方です。
    実際のところ、負傷してから9日間休んでおりました。ケガだけが欠勤の原因だけではないようです。
    このような内容でも大丈夫でしょうか。
    よろしくお願い致します。

  4. HANA HANA より:

    >ねぎ様

    返信いただきありがとうございます。

    そうしますと、ご本人が納得してくれるかどうかがポイントになります。

    先生が2日間だけしか休業を認めていないから…ということで休業補償の対象にならないことをご本人が納得しているのであれば8号様式を提出する必要はありません。

    反対に、打撲が原因で9日間休んだんだからどうしても労災に請求したい!ということであれば、8号様式を提出するしかないかもしれません。請求する権利があるのはあくまでも怪我をした本人にあるからです。
    その場合、労基署で確認や調査が行われた後に支給になるかどうかが決定されます。

  5. ねぎ より:

    HANAさま
    ご回答ありがとうございました。
    本人に確認します。
    非常に助かりました。

  6. ねぎ より:

    お世話になります。
    基本的な事でお恥ずかしいですが、ご教示お願いします。
    パート社員が業務中にポットを倒して火傷を負い、幸いにも負傷してから5日目には職場復帰しました。尚、職場復帰したものの、しばらくは病院で消毒をしてから出勤しており、時給のため、収入減となっています。このような場合、休業はしていないことから、労災では時短分を補う制度はないでよろしいでしょうか?

  7. HANA HANA より:

    >ねぎさん
    コメントありがとうございます。

    おっしゃる通り「時短分を補う」という目的の制度はありません。
    ですが、病院を受診している時間はある意味「療養のために働くことができない」わけですから、休業補償の支給要件を満たしていると判断されて支給対象となる場合もあります。この辺りは実際問題ケースバイケースなんですよね。ただし、その場合でも平均賃金の6割以上の賃金が支払われている日はそもそも対象になりませんので、例えば朝だけ少し病院に寄ってくるくらいの程度では該当にならないと思います。

  8. ねぎ より:

    ご回答頂き、ありがとうございます。
    平均賃金の6割以下の賃金が支払われた日がある時には支給されるのでしょうか?賃金が支払われなかった際に支給されるものと思っておりました…。
    そのあたりご教示頂けますと幸いです。よろしくお願い致します。

  9. HANA HANA より:

    >ねぎさん
    少しご質問の意図がわからないところがありますので確認なのですが。
    そのパート社員の方は、通院のため「一部、欠勤扱いになっている」ということでよろしいのでしょうか?例えば、所定労働時間8時間のうち、2時間欠勤、6時間出勤という具合にです。

  10. ねぎ より:

    質問の意図がわかりずらく、申し訳ありません。
    「平均賃金の6割以上の賃金が支払われている日はそもそも対象なかなりません」のところが理解できなかったものですから…
    該当のパート社員は負傷後、5日で職場復帰しました。ご教示頂き、ありがとうございました。

  11. HANA HANA より:

    >ねぎさん
    例えば、所定労働時間1日8時間の人が、2時間リハビリ通院により欠勤し、残りの6時間出勤しているとします。この場合、一部ではありますが療養のために休業していて、かつ2時間分の賃金が欠勤減額されているので、この2時間分を休業請求することができます。(休業の必要性という問題がありますので、支給されるかどうかはまた別問題になりますが)
    ただし、出勤した6時間分に対する賃金が、平均賃金の6割以上になる日は、すでに最低限の金額が支払われていると考えられるのでそもそも休業した日として取り扱われないという考え方になるということです。

  12. ぴこたん より:

    3/7に負傷、休業なし通院のみ、その半年後、手術が必要となり休業しました。休業補償の請求にあたってもととなる基礎賃金の算定は負傷日前三か月の賃金になりますか?それとも休業前三か月の賃金で算定されますか?

  13. HANA HANA より:

    >ぴこたんさん
    コメントありがとうございます。
    負傷日前三か月の賃金になります。

  14. ねぎ より:

    HANAさま
    お世話になっております。
    仕事中にアキレス腱を断裂し、完治はしておりませんが11/1付で事務職に異動となり職場復帰となった社員がおります。10月の休業補償請求で終了となりますが、職場復帰の連絡等、労基署には何か必要な事項はあるのでしょうか。尚、怪我からの障害等はありません。
    基本的な質問で申し訳ありません。よろしくお願い致します。

  15. HANA HANA より:

    >ねぎさん
    コメントありがとうございます。
    職場復帰の連絡は必要ありません。他もお話しの限りでは特に何もないように思います。

  16. ねぎ より:

    HANAさま
    基本的な質問にご回答頂き、ありがとうございました。また、よろしくお願い致します。

  17. 山本 京子 より:

    後十字靭帯断裂手術後、2月20日から仕事復帰しましたが、2月はまだ完全に働ける状態ではなかったため3時間程度で働いていました。3、4月も週一でリハビリのため午後帰り。こういった場合も休業補償の申請は出来るのでしょうか?
    すでに全く働けなかった期間の休業給付金は支払われています。

  18. HANA HANA より:

    >山本京子さん
    コメントありがとうございます。

    医師が認めているのなら申請することは可能かと思います。その際、請求書の他に、一部休業日に対して支払われた賃金額などを記入する「別紙2」の提出が必要になります。
    結果どのくらい支給されるのかにつきましては労基署の判断になります。

  19. 山本 京子 より:

    回答ありがとうございます。
    「別紙2」とは様式8号の(別紙)2ですか?別紙2のみの提出でよろしいのでしょうか?

  20. HANA HANA より:

    >山本京子さん
    はい、様式8号と様式8号(別紙2)の提出が必要になります。
    その他、提出義務はありませんが添付資料としまして、出勤時間や給与額がわかるもの(タイムカードや賃金明細など)のコピーがあるとわかりやすいかもしれません。

  21. 山本 京子 より:

    ありがとうございました。
    提出してみます。

  22. しのぶ より:

    質問させていただきます。
    私は正社員だった一年前、うつ病と診断され3ヶ月休んだ(欠勤扱い)のち解雇されました。
    解雇後から現在も私は月に一回程度通院し投薬治療を受けています。
    一時期病状が良くなり、失業給付を受けて就職活動しましたが、給付も終了し、就職には至りませんでした。
    私は失業給付期間中の調子が良い時期に労災の申請をし、対面の聴取も受け、4,5か月後には結果が出る予定です。
    もし労災が認定された場合、休業補償が申請できる期間は正社員の時に休み始めた時から失業給付を受け始めるまでの間と考えてよろしいでしょうか。
    ご回答よろしくお願いいたします。

  23. HANA HANA より:

    >しのぶさん
    コメントありがとうございます。

    実際にどのような取り扱いになるかは別としまして、正しくいくのであれば、休んだ期間、どのような理由で働けなかったのか?で受ける給付が変わってくるということになります。具体的には、
    ①うつ病のせいで働けなかったのか
    ②体は働ける状態だったけど職がなくて働けなかったのか
    例えば、診断後、現在も引き続き①の状態が続いているということでしたら、休業補償を受けるべきということになりますので、失業給付は返還するということになりますし、失業給付を受け始めるまでは①、その後は②ということでしたらお話のとおりでよろしいのではと思います。

  24. しのぶ より:

    早速のご回答ありがとうございます。
    実際の所、病状は良くなったり悪くなったりしており、現在は失業給付の受給の為に提出した医師の診断書(働けますよという診断書)提出時よりは悪い状況です。
    また給付中に申請した労災の件はハロワには話しておりません(当時話す必要性がわからなかったので)
    自分的には労災が認定されても、労災が有効な期間は失業給付を受けた時点までの期間の話と思っておりましたが、その先の期間も申請できる可能性が全くない訳ではないようなので、可能性が広がりました。ご教授いただきありがとうございます。

  25. よつば より:

    HANAさま
    こんにちは。以前もご質問させていただきました者です。重ねての質問失礼します。
    前回同様、通勤途中での労災(交通事故)についてお教えください。
    加害者側保険会社より指示があり、勤務先会より休業補償証明書が作成されました。
    その中身として、給与は全額支払いと明記されていました。
    その場合、特別支給金含め、休業補償請求は不要なのでしょうか?
    以前に「特別支給金は給与の支払いがあったとしてももらえるため申請したほうがいい」と言う内容の記事を見ており、どうしたものか判断がつきません。
    ぜひ、HANAさまのお知恵をお借りしたいです。

  26. HANA HANA より:

    >よつばさん
    コメントありがとうございます。
    お話からいきますと「(特別支給金含め)休業補償はもらえない」と思います。
    理由としましては、休業補償の支給要件の一つである「お給料をもらっていない」を満たさないためです。

    >記事
    もし当サイトの記事でしたら場所を教えて下さい。訂正いたしますので…。
    恐らくですが、①休業補償の支給要件を満たし(お給料をもらっていない等)、②加害者側保険会社から休業損害が支払われている場合のお話ではないでしょうか。この場合は、休業損害が全額支払われていても、労災保険に特別支給金のみの申請をすることは可能です。

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