こんにちは!『労災保険!一問一答』のHANAです。
『労災で会社が受ける(と考えられている)4つのデメリットとは?』『労災かくしとは?』『会社に拒否されても労災請求する方法』についてお話していきます。
下でくわしくお話するよ!
労災を使うと会社にどんなデメリットがある!?
近年、「労災かくし」という言葉を耳にすることが多くなりました。
労災かくしとは、「会社が故意に労働者死傷病報告を提出しない」「虚偽の報告をする」など、労基署に事故があったことを隠すことをいいます。労災かくしは犯罪とされており、悪質な場合は送検されます。絶対にやめましょう。
では、なぜそのようなリスクがあるのに、会社は労災を隠そうとするのでしょうか。会社が労災を使いたくないと思う理由についてあげてみます。
会社にこんな感じの心理がはたらくから、労災を使いたくないんですね。
では、この4つの会社が労災を使いたくないと考える理由について、実際にどんなデメリットがあるのか考えていきましょう。
デメリット1 保険料が上がる?
労災を使うと自動車保険のように保険料が上がるのでは?と思っている会社も多いです。結論からいうと、保険料が上がるかどうかについては「メリット制」という制度が適用になっているかどうかで決まります。
「メリット制」とは、一定規模以上の事業に対してのみ適用されるもので、労災保険のメリット制の適用になっている事業は、労災保険を使うと保険料が上がる可能性があります。
反対に、メリット制の適用になっていない会社は労災を使っても使わなくても保険料の増減はありません。
メリット制の適用になっている事業は、労災を使うと保険料が上がる可能性が高くなりますので、これが会社が労災を使いたくない理由の一つになっていると思います。
労災を使うと…メリット制の適用がある会社は保険料が上がる可能性があるが、適用がない会社は保険料の増減はない!
デメリット2 労働基準監督署から検査・調査などが入る?
労災保険に請求すると、労基署から立入検査に入られるのでは?と考えている会社も少なくありません。
たしかに、死亡災害や転落事故、大人数を巻き込むような大きな事故などが起きた場合は、ほぼ間違いなく労働基準監督署の立ち入り調査が入ります。これによって、会社はいろいろな対応に追われることになるのは確かです。
また、それほど大きな事故ではなかったとしても、災害発生状況に疑義があるものや、精神障害や脳・心臓疾患、上肢障害、一酸化炭素中毒などの業務上疾病などについても、会社に対して調査がおこなわれることが多いです。これも会社が労災を使いたくないと思う理由になっており、一つの会社のデメリットとしてあげられます。
しかし、仕事中に転んで骨折した、調理中にやけどをしてしまったなどといった明らかな災害については請求書を提出するだけで済むことが多く、不備など何かあったとしても電話などの補足説明などで足りる場合がほとんどです。
死亡災害や重大災害、業務上疾病などを除き、だれが見ても明らかに仕事が原因で発生した災害であれば、調査には入られない!
デメリット3 仕事がもらえなくなる?
これは主に建設業などがあてはまると思いますが、建設業の場合、「発注者→元請→下請→孫請」などのように数次の請負によって一つの現場が成り立っていることが多いです。建設業の場合は、現場単位で労災保険に加入することになっており、保険加入や保険料を負担しなければならないのはその現場の「元請」の会社になります。
下請や孫請の会社の労働者が現場でけがをしてしまった場合、下請や孫請の社長はどう考えるでしょうか?
「自分の労働者のせいで、元請の保険料が上がったり、事務手続きなどをわずらわせてしまったり、経営審査などの点数を下げてしまう」「そんなことをしたら、今後、仕事をもらえなくなるかもしれない」と考えてしまうのではないでしょうか。これも会社が労災を隠したい理由の一つになっていると考えられます。
デメリット4 会社のイメージダウンにつながる?
労災事故が多い会社は、はたから見れば「この会社、ちゃんと安全対策とってるの?」などと不安になってしまいます。そんな会社に入社したくないし、仕事も頼みたくないですよね?
また、それまでずっと無災害を続けてきてクリーンなイメージの会社だったとしても、一度、労災事故を起こしてしまうとその記録が途切れてしまいますので、会社のイメージダウンにもつながりかねません。
このような心理がはたらくことも会社が労災を隠してしまう一因になっていると思います。
会社に労災保険の手続きを断られたらどうすればいい?
労災を隠そうとする目的で会社に労災請求することを拒否されたとしても、自分で手続きをすれば労災請求することは可能です。くわしくは下の記事をご覧ください。
労災かくしとは
労働者が労働災害などにより死亡または休業した場合には、事業者は所轄の労働基準監督署に「労働者死傷病報告」を提出しなければならないことになっています。
労災かくしとは、「故意に労働者死傷病報告を提出しないこと」又は「虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を所轄労働基準監督署長に提出すること」をいい、このような労災かくしは適正な労災保険給付に悪影響を与えるばかりでなく、労働災害の被災者に犠牲を強いて自己の利益を優先する行為で、労働安全衛生法第100条に違反し又は同法第120条第5号に該当することとなります。
このような労災かくしに対して厚生労働省は、罰則を適用して厳しく処罰を求めるなど、厳正に対処しています。労災かくしによる検察庁への送検件数は年々増加傾向にあります。
労働者死傷病報告はどんなときに提出が必要?
労働者死傷病報告は、下のように労働災害などで労働者が死亡したり休業したりした場合に提出が必要です。休業日数によって提出する様式と期限がちがいます。
- 労働者が労働災害により、負傷、窒息又は急性中毒により死亡し又は休業したとき
- 労働者が就業中に負傷、窒息又は急性中毒により死亡し又は休業したとき
- 労働者が事業場内又はその附属建設物内で負傷、窒息又は急性中毒により死亡し又は休業したとき
- 労働者が事業の附属寄宿舎内で負傷、窒息又は急性中毒により死亡し又は休業したとき
死亡または休業4日以上の場合
遅滞なく速やかに労働者死傷病報告(様式第23号)を管轄の労働基準監督署に提出します。
様式ダウンロード
参考労働者死傷病報告(様式第23号)の記入例と書き方を徹底解説
休業1〜3日の場合
四半期(4〜6月、7〜9月、10〜12月、1〜3月)ごとに取りまとめて、翌月末まで(例:4〜6月の場合は7月末まで)に労働者死傷病報告(様式第24号)を管轄の労働基準監督署に提出します。
様式ダウンロード
社長さんの気持ちもわからないでもないですが、労災かくしは犯罪です。どんなときでも自分のところの労働者を一番に考える社長さんであってほしいと思います。
コメント
結局、労災を使うと、会社は『仕事がもらえなくなる』、かつ『イメージダウンする』という解釈は確定で良いのでしょうか?
製造業経営です。
従業員が同じ機械で2名(使った時間はバラバラ)軽いケガ(当日病院に行って、異常なしの医師の判断)をしたのですが、私は今後のことも考えて、正直に『労災申請』としました。ですが、この記事からすると、仕事をもらえなくなったり、会社のイメージが下がるなど、デメリットしかないように思えます。
確かに不注意でケガをしたのは会社の管理体制にも問題はあると思うのですが・・・。
けど、従業員の為に正直に申請したら、結局労基に強制捜査されたり、イメージダウンしたりでいいことは何一つないような気がします。やはり正直者がバカを見るだけなのでしょうか?
>うめさん
コメントありがとうございます。
確定ではありません。
一例ではありますが「労災を使いたくない」と考える社長さんの心理を列挙したもので、実際にそうなるというものではありません。
>私は今後のことも考えて、正直に『労災申請』としました。
正しいご判断だと思います。
本当に返答が返ってくると思ってなかったので、正直びっくりしました
ご丁寧な返信ありがとうございました
私は銀行から今の会社の経理総務部長として着任して1年になりますが、『良いものは良い、(法的に、もしくは人間として)ダメなものはダメ』という姿勢でしか仕事に臨んでないので(融通が利かないと言えば融通が利かないってことなんでしょうけど・・・)、本件についても正直な対応をすることが、従業員に対しても失礼にならないのでは・・・、と考えたからなんですが、色んな情報を検索すると、労災申請後に労基に入られて会社のイメージが下がって仕事がなくなったとか、ネガティブな内容ばかりが目立ったので、『私の判断のせいで会社が潰れるのか・・・。なら、黙ってた方が良かったのか』とかなり心配になり、メールさせて頂きました
素人みたいな話で申し訳ありません。
でも、コメント頂いて気が楽になりました本当にありがとうございました
弊社には『社労士』がいないので、これからもちょこちょこ相談させて下さいよろしくお願い致します
>うめさん
返信いただきありがとうございました。
会社の規模や業種などにもよりますが、軽い怪我であれば請求書を提出すればそれで済むことがほとんどだと思います。ヘタに労災を隠すことの方がリスクが大きいと私は感じています。
参考にしていただけて良かったです。今後とも宜しくお願いします。
仕事をしていたら筋肉痛になりました。ずっと治らなくて痛みが増すばかりで何かおかしいと思って病院行ったら肋骨骨折と診断されました。会社の担当に労災じゃないかと言ったらくしゃみだけでもなるしその仕事でなったのか判断が難しいと言われたのですが労災にはならないんですか?しかもその担当会社側に骨折したと言えばじゃあ仕事出来ないねと言われると言われました。あまりに痛いのでお休みしました。結局辞めると一言も言ってないのにちゃんと説明もなく退職届けが届いて自己都合で書いてと書いてありました。親身になって話してくれれば良かったのですが…今は休養してるので無職です。泣き寝入りするしか無いのですか?
>よーこさん
コメントありがとうございます。
労災になるためには、肋骨骨折と仕事との間に「相当因果関係」が必要になります。例えば、仕事中に転んだとか、脇腹を機械にぶつけたとかですね。
反対に、仕事によって肋骨を骨折したということがいえないと労災になるのは難しくなります。
返事ありがとうございます。本当にまさか返事もらえるとは思いませんでした。ここに出すコメント間違えたかなと思ってました。今日、労働基準監督に相談してみました。骨折はもしかしたら重い物を引っ張る時に手前にあった押すボタンがあってその時ぶつけてしまい激痛があってそのせいかもと言ったのですが…ぶつけた日にちもわからないし筋肉痛もそれと関連があるのかわからないので労災認定は難しいと言われました。それが因果関係なんですね。残念ですが勉強になりました。ありがとうございました。
娘が、知的障害で障害者雇用で65才まで勤務できる会社につとめていますが、嘘をついている仕事を辞めろ、と2021年から言われ続けたようで、この2月21日に退職願と書いてあるフォームを明日書いて持ってこいと言われるまで、私は気がつきませんでした。
娘は、2022年3月から自傷行為を始め、自分の足に椅子をたたきつけて、足が腫れあがっています。傷が化膿して、2023年1月に完治したと思ったらまた、足に椅子をたたきつけて、足がまた化膿してはれあがっています。
ずっと週3で通院している病院で労災の申請をしたいと相談したのですが、パワハラで自傷行為をしたという証明が難しくて、できるかどうかわからないので、労働基準監督署に証拠を持って,傷を見せにいってみたらいいといわれたのですが、証拠はありません。
知的障害の娘の言う事だけです。
これでは、行っても無駄なのでしょうか?
>福西 利恵子さん
コメントありがとうございます。
労災になるかどうかは、労災保険に請求して、労基署ですべてを調査してからじゃないとわかりません。調査には長い時間や労力がかかり、その結果、労災にならなくて無駄になってしまったということもあるかもしれませんが、その手順をふまないと労災になるものもなりません。
お話しからまず気になったのが、会社での出来事後に「うつ病」や「統合失調症」などの精神障害の傷病を発症したということでしょうか?知的障害と区別するために、そこは一つ重要なポイントのように思います。
また、労災に認定されるためには、仕事上で「強」と判断されるような出来事があったことが必要になりますが、「仕事を辞めろ」と言われ続けたり、「退職願をもってこい」と言われたことが事実とすれば、これは充分に労災認定される可能性が高い出来事だと思います。
>行っても無駄なのでしょうか?
決して無駄とは思いません。しかし、知的障害をお持ちの方ということで、精神障害の労災認定にあたり不利になる可能性はあるかもしれません(個体側要因も考慮されるため)。
労災請求などについてまとめた動画がありますので、もしよろしければご覧になってみてください。こちら