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腰椎椎間板ヘルニアなどの腰痛の労災認定について
腰は、仕事中だけではなく、普段の日常生活においても体重などの負荷を受けながら、曲げたり、伸ばしたり、ひねったりなどの運動を繰り返していますので、日頃から非常に負担がかかりやすい体の部分です。
腰椎椎間板ヘルニアという傷病は、そういった日常の負荷の積み重ねにより時間とともに進行していくものでもありますので、仕事をしていない人でも多く発症するものです。したがって、仕事が原因で発症したものなのか、そうではないのか、区別することが非常に難しいといえます。
そこで、労災保険では腰椎椎間板ヘルニアなどの腰痛に対して、認定基準が決められています。
ヘルニアなどの労災の腰痛の認定基準
労災保険では腰椎椎間板ヘルニアなどの腰痛について認定基準が定められています。
- 腰の負傷またはその負傷の原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められること
- 腰に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往症・基礎疾患を著しく悪化させたと医学的に認められること
少し難しい表現が使われていますが、要約すると「仕事中に起きた災害的な出来事が原因で腰痛になった」場合に労災になるということです。
傷病名が「腰椎椎間板ヘルニア」の場合も、基本的には「ぎっくり腰」などと同様に、労災の腰痛の認定基準によって労災になるかどうかが判断されることになります。
したがって、「こんなことがあったのならヘルニアになってもおかしくないな」というような出来事が仕事中に起きたことで腰を負傷してしまい、その結果、腰椎椎間板ヘルニアを発症したと認められれば労災補償の対象になることが考えられます。
災害的な出来事がどんなものかについては、「ぎっくり腰」のケースと同様に考えられています。どのような場合に労災になり、どのような場合に労災にならないのか、具体例をあげて説明していますので、あわせてご覧ください。
腰椎椎間板ヘルニアの場合、治療の範囲が制限される場合がある
一般的に、腰椎椎間板ヘルニアが起こる原因は、椎骨と椎骨の間にあるクッションの役割をはたしている軟骨が変性により徐々に飛び出してきて神経に触るために痛みが起こると言われており、原因は主に加齢によるものと考えられています。
このため、年齢を重ねたり、私生活で腰に負担がかかったりなどで、自分の気づかないところで少しずつ腰椎椎間板ヘルニアが進行しているケースが少なくありません。
それが単に仕事中の事故をキッカケにして症状があらわになったと思われるようなものであれば、その腰椎椎間板ヘルニアの発症はほとんどもともとの基礎的疾患のせいとも考えられます。
したがって、このように腰椎椎間板ヘルニアの基礎疾患や既往症があるような場合は、痛みがある程度なくなるくらいまでの治療であれば労災として認められますが、もともとからあった部分の治療、つまり腰椎椎間板ヘルニアの手術などの根本的治療については、労災保険では認められないケースがあります。
腰椎椎間板ヘルニアのほかにも、「腰椎椎間板症」「変形性脊椎症」「脊椎間狭窄症」「腰椎分離症」「腰椎すべり症」などの傷病名も、いわゆる「私病」的な要素が大きいと考えられることから、同様の取り扱いになる可能性が考えられます。
このように労災保険では腰椎椎間板ヘルニアなどの既往症または基礎疾患のある人が、仕事中の負傷などによりその疾病が増悪したり再発したりしたと認められるようなケースは、その負傷前の状態に回復させるための治療に限り認められているものです。