派遣社員の休業補償は派遣先?派遣元?

質問

派遣社員が仕事中にけがをしてしまいましたが、派遣先と派遣元のどちらの労災を使うことになるのでしょうか。また、労災保険と雇用保険の保険料はそれぞれどちらが納付しなければならないのでしょうか。

答え

派遣労働者の場合、派遣元の労災を使うことになります。また、労災保険・雇用保険ともに保険料の納付義務は派遣元にあります。

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下でくわしくお話するよ!

労働者派遣事業とは

労働者派遣事業とは、一般的に「人材派遣会社」と呼ばれる会社が行っている事業のことで、労働者派遣法に基づいて、自社で雇用する労働者を他の企業に派遣してそこで就業をさせる形態の事業のことをいいます。

本記事での「派遣」とは、基本的にこの労働者派遣事業がおこなう派遣のことをいっています。

派遣労働者の労災適用は?

派遣社員の労災

派遣社員の労災加入は派遣元

労働者派遣事業については、派遣元事業が労災保険の適用事業となりますので、休業補償なども派遣元の保険関係から給付されます。

その理由については、以下のように考えられています。

  • 労災保険は「労働者を使用する事業が適用事業」のため、労働契約関係にある事業が適当と考えられること
  • 派遣元は労働者の派遣先を選ぶことができる立場であり、派遣先との派遣契約に基づき労働者を派遣する責任があること
  • 派遣元は雇用主であり、その業務命令により労働者を派遣先で就労させているため、派遣先において派遣労働者の安全衛生が確保されるように配慮する責任があること

したがって、派遣社員の労災は派遣元に加入する義務がありますし、保険料も負担しばければならないことになっています。

ただし、だからといって派遣先が労働者の安全衛生義務を免れるわけではありません。派遣先の指揮命令下において労働に従事させているわけですから、派遣労働者の労働災害を防止する責任があります。

労災保険料率はどれを使うの?

どの業種の労災保険率が適用されるかは、派遣先の事業の業種によって決まることになっています。

一般的に複数の事業場に対し労働者を派遣している派遣会社が多いと思いますが、業種が数種類にわたる場合は主たる業種の労災保険料率が適用されます。

派遣社員の雇用保険も派遣元

派遣労働者の雇用保険については、派遣元で被保険者として取り扱われます。

ちなみに出向労働者の場合は?

出向労働者の場合は一般的に、出向先において労災が適用になります。

出向労働者と派遣労働者の大きな違いは、「労働契約を結ぶ会社」です。派遣労働者は派遣元と労働契約のみですが、出向労働者は出向元との労働契約の他に出向先とも労働契約を結びます。

したがって、出向労働者は出向先とも雇用契約があり、出向先事業組織に組み入れられ、出向先事業主の指揮監督を受けて労働に従事すると考えられますので、労災保険においては、出向元で賃金が支払われている場合でも出向先で支払われている賃金に含めて計算し、出向先で対象労働者として適用することになっています。

なお、出向労働者の雇用保険については一般的に出向元で加入することが多いですが、出向労働者は出向元と出向先の2つの雇用関係を持つことから同時に2つ以上の雇用関係にある労働者に該当するため、生計を維持するのに必要な主たる賃金を受ける方の雇用関係についてのみ被保険者になります。

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まとめますと…

・派遣労働者
労災保険も雇用保険も出向元!
・出向労働者
労災保険は出向先!雇用保険は出向元!

派遣だの出向だの請負だの委託だの、雇用形態ってなんだかいろいろとややこしいですね^^;

コメント

  1. A より:

    工事業者が構内で労災を起こした場合の工事を依頼した側の責任について、お教えいただきたいです。
    事故の原因は作業者の不注意だとしても、工事をしていた場所が弊社の構内だとすると何か責任あるのかご教授いただきたいです。

  2. HANA HANA より:

    >Aさん

    コメントありがとうございます。

    ご質問の内容が労災保険のお話と異なるため、あくまで私の拙い知識からの回答になることをご了承ください。

    民法の第716条に「注文者の責任」という条文があります。「注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。」

    これからいきますと、まずは、原則的には注文者には責任はないですよということがわかります。注文者と請負人は一般的に指揮命令関係にはありませんからね。

    ただし、「注文や指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。」とありますので、例えば、注文者が余計な指図をしたことが原因で災害が起こったですとか、注文するにあたり重要なことを伝え忘れていたために事故が起きてしまった等の場合は、注文者にも責任が問われることがあるかも…という解釈ができると思います。

    注文者の構内で起きた事故であっても同様と考えられます。

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