下でくわしくお話するよ!
海外派遣者の特別加入制度
日本の法律には、一般原則である「属地主義」というものがありますので、労災保険の適用範囲も通常は日本国内における事業に限られます。したがって、海外で働く人は、その働く先の国の制度が適用されるというのが原理原則的な考え方です。
しかし、その国によって医療水準や給付水準が変わりますし、そもそも保護制度じたいが確立されていないような国もあると思います。
そこで、日本から海外の事業に派遣される人についても、一定の範囲で労災保険の加入を認め、保護を図る目的でつくられたのが「海外派遣者の特別加入」制度です。
なお、特別加入制度には4つの種類があり、他の特別加入制度についても知りたい場合は、以下のページもご覧ください。
この4種類の特別加入のうち、このページでは海外派遣者の特別加入の概要について説明していきます。
海外派遣者の特別加入ができる人は?
海外派遣者の特別加入ができる範囲は次のとおりです。
- 国際協力機構等開発途上地域に対する技術協力の実施の事業を行う団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する人
- 日本国内で行われる事業から派遣されて海外支店、工場、現場、現地法人、海外の提携先企業など海外で行われる事業に従事する労働者
- 日本国内で行われる事業から派遣されて海外支店、工場、現場、現地法人、海外の提携先企業など海外で行われる300人(金融業、保険業、不動産業、小売業は50人、卸売業、サービス業は100人)以下の労働者を使用する事業に従事する事業主その他労働者以外の人
特別加入の手続きをするには?
派遣元の団体または事業主が日本国内においておこなっている事業について成立している保険関係をとおして手続きを行います。
特別加入申請書(海外派遣者)を作成し、管轄の労働基準監督署に提出します。
特別加入の保険料はいくらくらいかかる?
海外派遣の特別加入者の中には、賃金を受けて労働に従事している人もいますが、特別加入制度という枠組みの中で労災保険の適用を受けることになっていますので、他の特別加入の場合と同様に給付基礎日額を3,500円から25,000円の範囲から選び、保険加入することになります。
この給付基礎日額は、支払う保険料を決定する基礎になりますし、給付を受けるときにもこれが基礎となり給付額が決定されることになります。
年間保険料については、海外派遣者の特別加入の保険料率は「3/1000」となっており(平成31年度)、給付基礎日額ごとの保険料は上記の一覧表のとおりとなります。
国内から海外へ業務により赴く場合、「海外派遣」ではなく「出張」と取り扱われる場合もあります。この「出張」にあたる場合は、特に手続きは必要なく、日本国内で成立済みの労災保険により補償されます。
「出張」になるのか「派遣」になるのかで判断に迷う場合がありますね。どちらかを判断するのに、海外における勤務期間の長短は関係がないとされていますので、さらにわかりづらいです。
基本的には、国内で異動する場合と同様に考えて、それが「転勤」にあたるのか「出張」なのかで考えるとわかりやすいかもしれません。転勤にあたる場合や、海外で行う工事に従事するような場合は、通常「派遣」と考えていただいていいと思います。
※詳細は労働局・労働基準監督署にお問い合わせください。
最後に、労働者に対する労災保険はいわゆる「強制保険」ですが、特別加入は「任意保険」ですので、当然ですが加入していなければ補償されません。保険の効力は、申請をして承認を受けた日以降からになりますので、気をつけて下さい。
海外派遣者の場合も労災保険に加入できる制度があるんですね!
出張の場合と判断がつきづらいときもあるから、そんなときは労働基準監督署に確認してみましょう!