労災保険の特別加入とはどのような制度なの?

質問

事業主や一人親方などでも労災保険に加入できる「特別加入制度」とは、どのような制度なのでしょうか。

ココがポイント
  • 事業主、役員、一人親方等でも特別に労災保険に加入できる任意加入制度です。
  • 特別加入は4種類あり、それぞれ加入できる条件が決められています。

こんにちは!『労災保険!一問一答』のHANAです。

『労災保険の特別加入制度の概要について』『特別加入のメリットとデメリットとは?』『4種類の特別加入の紹介』についてお話していきます。

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下でくわしくお話するよ!

労災保険の特別加入とは

労災保険の特別加入とは

労災保険は、なんらかの事業に雇用されている「雇用労働者」の労働災害に対する保護を目的とした制度なので、雇用されている側の人が対象です。なので本来、この「労働者」には該当しないような人、たとえば事業主や自営業者、一人親方等の人は対象になっていません。

しかし、これらの人々の中にも業務の実態などからみて、雇われている労働者の人と同様に業務に従事している人もたくさんおり、労働者に準じて労災保険の保護の対象にすべきと考えられるような場合も多々あります。

労災保険の特別加入とは、そういった人々に対しても労災保険制度本来の主旨や建前を損なわない範囲で、一定の範囲を定めたうえで、労災保険による保護が図られた任意加入制度のことで、「特別加入制度」と呼ばれています。

特別加入制度は、大きくわけて次の4つの種類があります。

  1. 中小事業主の特別加入
  2. 一人親方等の特別加入
  3. 特定作業従事者の特別加入
  4. 海外派遣者の特別加入

この4つの特別加入について順番に説明していきますが、その前に労災保険の特別加入のメリット・デメリットについて少しふれてみます。

特別加入のメリットとデメリットとは?

労災の特別加入のメリットとデメリット

本来、労災保険に加入できない事業主が加入できるという時点でメリットがある特別加入制度ですが、それ以外のメリット、また反対にデメリットについても考えてみたいと思います。

特別加入のメリット

任意加入である

労災の特別加入は「任意加入制度」です。労災をかけたければ加入すればいいし、かけたくなければ従来どおり加入しなければいいだけです。自分がおこなっている仕事の危険度などに応じて、加入するか加入しないか選択できるメリットは大きいと思います。

ただし、中小事業主の特別加入では「包括加入の原則」というものがあり、特別加入する場合には事業主本人のほか、役員や家族従事者などの該当者全員を包括して加入しなければならないことになっています。

保険料の設定が選べる

特別加入するとき、掛け金にあたる保険料や、労災給付されるときの給付金額のもとになる「給付基礎日額」を、3,500円から25,000円の中の数字から選択することができます。

一般の労働者は、けがをしたときの賃金に応じて給付基礎日額が計算されますが、特別加入者の場合は加入や更新手続きをするときに給付基礎日額を選択することになっています。(原則、自分の収入に近い数字を選択します)

特別加入のデメリット

労働保険事務組合などに事務委託をする必要がある

労災の特別加入は、一般の労働者のように労働基準監督署などで直接加入手続きができるわけではありません。

労働保険事務組合や労災の特別加入を取り扱っている団体などに労働保険関係の事務を委託し、そこを通して特別加入しなければならないことになっています。(海外派遣の特別加入を除きます。)

事務委託をすることで特別加入の手続きや更新の手続きなどをしてもらえたり、同時に雇用労働者の分の手続きもしてもらえるというメリットがある一方で、保険料以外にも事務手数料などを負担しなければならないことになりますので、金銭的な負担が増えるというデメリットがあります。(事務手数料の金額などは、労働保険事務組合や各団体によって違います。)

仕事中のけが全てが対象になるわけではない

労災の特別加入は、そもそも「労働者に準じて」保護をするという目的のものですので、原則的には一般の労働者がおこなうような業務中に起こった事故などに限り給付の対象になるという考え方です。

特別加入の種類によって変わりますが、給付対象になる業務が限定されていたり、労働者の所定労働時間以外については原則認められないなどのしばりがあるため、仕事中のけがだからといってすべてが給付対象になるわけではありません。

また、休業補償も一般の労働者のように休業期間中はすべて補償の対象になるわけではなく、その範囲も限定されています。(くわしくは4種類の特別加入の各項目で説明しています)

労災の特別加入は4種類ある!

保険の特別加入とは

労災保険の特別加入制度は「中小事業主等の特別加入」「一人親方等の特別加入」「特定作業従事者の特別加入」「海外派遣者の特別加入」と4種類あります。

ただし、4種類の中から選択できるといったようなものではなく、自分の実態により加入する種類が自ずと決まるものと考えてください。では順番に紹介していきます。

中小事業主等の特別加入

一定の人数以下の労働者を常態として使用する事業主や役員、家族従事者が対象です。

「一定の人数以下の労働者を状態として使用する」とは、下の表に該当する事業規模で、かつ年間100日以上労働者を使用している場合をいいます。

業種労働者数
金融業
保険業
不動産業
小売業
50人以下
卸売業
サービス業
100人以下
上記以外の業種300人以下

中小事業主等の特別加入をするためには、労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託しなければなりません。

中小事業主等の特別加入について、くわしくはこちらをご覧ください。

一人親方等の特別加入

労働者を使用しないで事業を行うことを常態とする一人親方、その他の自営業者などで、次の事業をおこなう人が対象です。

  • 自動車を使用して行う旅客または貨物の運送の事業
  • 建設の事業
  • 漁船による水産動植物の採捕の事業
  • 林業の事業
  • 医薬品の配置販売の事業
  • 再生資源取扱いの事業

一人親方等の特別加入をするには、特別加入しようとする者が構成員となる団体(特別加入団体)に加盟することが必要です。

一人親方等の特別加入について、くわしくはこちらをご覧ください。

特定作業従事者の特別加入

特定の危険有害な作業に従事する自営業者などが対象です。

  • 特定農作業従事者
  • 指定農業機械作業従事者
  • 職場適応訓練従事者
  • 事業主団体等委託訓練従事者
  • 家内労働者及びその補助者労働組合等の常勤役員
  • 介護作業従事者

特定作業従事者の特別加入をするには、特別加入しようとする者が構成員となる団体(特別加入団体)に加盟することが必要です。

特定作業従事者の特別加入について、くわしくはこちらをご覧ください。

海外派遣者の特別加入

日本から海外の事業に派遣される方について、労災保険の建前および保険技術上可能な範囲で労災保険の加入を認め保護を図る制度です。

海外派遣の特別加入について、くわしくはこちらをご覧ください。

自分はこの4種類に該当しないけど!?

自分は4種類の特別加入にも該当しないし、雇われている労働者でもないし…と思われた人もいるかもしれません。

たとえば、「パン屋さんを自分と妻の2人だけでやっている」ような場合、労働者も使っていないから「中小事業主」にならないし、一人親方や特定作業従事者の職種の中にも該当するものがありません。

このような場合は、労災保険の基本原則どおり、労災には加入することができないと思われます。(詳しくは、労働局・労働基準監督署に確認してみることをおすすめします)

管理人

労働者に対する労災保険は「強制保険」ですが、特別加入は「任意保険」ですので、当然ですが加入していなければ補償されません。保険の効力は、申請をして承認を受けた日以降からになりますので、加入の時期を考えて申請するようにしましょう。

また、保険料は月割計算になっていますので、加入するときはできれば月の初めから加入するのがベストですよ!

コメント

  1. 山田 より:

    特別加入をしている役員が労災事故をおこした場合、通常の労災と同じ申請でいいですか?組合への申告は必要ですか?

  2. HANA HANA より:

    >山田さん

    コメントありがとうございます。

    通常の労災と同じ申請で良いです。

    ただし、管轄の労働局にもよりますが、特別加入者の事故の場合、事務組合の証明書などの書式の添付が必要になる場合があります。管轄の労基署または事務組合に確認することをおすすめいたします。

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