傷病(補償)年金とはどういうものなのでしょうか?

質問

労災でけがをしてから1年半くらい休業補償をもらっています。労働基準監督署から「傷病の状態等に関する届」と「診断書」を提出するように指示がありました。聞くと傷病補償年金に該当するかどうか判断するために提出が必要とのことでした。この「傷病補償年金」とはどういうものなのでしょうか。

答え

労災の傷病(補償)年金とは、療養開始1年半後に一定の傷病の状態に該当すれば、休業補償の代わりに年金が支給されるものです。年金受給後も治療はそれまでどおり継続して受けることができます。

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下でくわしくお話するよ!

傷病(補償)年金とは

労災の傷病年金とは

負傷や疾病の程度によっては、療養が長期にわたる場合があります。

傷病(補償)年金とは、療養が長期にわたり、かつ、傷病の程度が重い人が該当するものです。

この「傷病(補償)年金」について、説明していきます。

傷病(補償)年金の受給要件とは?

傷病(補償)年金は、業務災害または通勤災害により負傷または疾病にかかった労働者が、傷病の療養の開始後1年6ヶ月を経過した日以後に下記の要件に該当した場合に支給されるものです。

  1. その負傷又は疾病が治っていないこと
  2. その負傷又は疾病による障害の程度が、労災保険で定める傷病等級に該当すること

傷病等級って?どのくらい重いと傷病(補償)年金に該当するの?

傷病等級は第1級から第3級まであります。

傷病等級と似たようなものに障害(補償)給付の「障害等級」があります。障害等級は第1級から第14級までありますが、傷病等級の第1級から第3級は、障害等級の第1級から第3級までと同程度となっていますので、かなり重い傷病の人が対象になります。

言いかえれば、傷病(補償)年金は、傷病の程度が重たく、かつ長期間にわたり治っていないということが条件になりますので、かなり傷病の程度が重篤と言える人でなければ傷病(補償)年金には該当しないと言えると思います。

では、どの程度なら傷病(補償)年金の第1級から第3級までに該当するのか、具体的に例をあげてみてみましょう。

第1級の例

  • 両足がまったく動かなくなった
  • 両眼を失明した
  • 両腕を上腕部から切断した
  • 両足を大腿部から切断した

第2級の例

  • 脊髄損傷で中等度の四肢麻痺が残った
  • 両腕を前腕分から切断した
  • 両足を下腿部から切断した

第3級の例

  • 脊髄損傷で軽度の四肢麻痺が残った
  • 一眼が失明し、もう片方の矯正視力が0.06以下になった
  • 両手の指が全部なくなった

以上のとおり、傷病(補償)年金は症状が重篤でなければ該当しません。

傷病(補償)年金に該当したらいくらくらいもらえる?

傷病(補償)年金に該当した場合、年金として1年間に支給される金額は以下のとおりとなります。なお、それまでもらっていた休業補償の代わりに支給されるものですので、休業補償は支給されなくなります

傷病(補償)年金

  • 傷病等級 第1級 給付基礎日額の313日分
  • 傷病等級 第2級 給付基礎日額の277日分
  • 傷病等級 第3級 給付基礎日額の245日分

給付基礎日額が「1万円」の人が第1級になった場合は、「313万円」が1年間に支給される金額ということになります。

また、その他にも一時金として「傷病特別支給金」や、賞与などの支給があった人には「傷病特別年金」の加算があります。

傷病特別支給金(一時金)

  • 第1級 114万円
  • 第2級 107万円
  • 第3級 100万円

傷病特別年金

  • 第1級 算定基礎日額の313日分
  • 第2級 算定基礎日額の277日分
  • 第3級 算定基礎日額の245日分

※算定基礎日額とは、賞与等の金額をもとに算定された日額

休業補償と傷病(補償)年金を比較してみよう

ここで、ちょっと「休業補償」と「傷病(補償)年金」との比較をしてみましょう。

休業補償は、給付基礎日額の約8割が給付されますから、給付日数に換算すると

365日分 × 8割 = 292日分

となり、年間でいえば「292日分」が支給される計算になります。

あれ!?それだと、傷病(補償)年金の2級(277日分)と3級(245日分)の場合は今までどおり休業補償をもらっていた方がお得なんじゃないの!?と思われた方もいらっしゃると思います。

ですがご安心いただきたいと思います。

休業補償の額に満たない分は、差額特別支給金というのが給付されることになっていますので、休業補償の金額を下回ることはないということになっています。

さらに、この他にも、年金が決定された段階で一時金として傷病特別支給金が支給されますし、負傷前に賞与をもらっていた人には傷病特別年金も上乗せされますので、傷病(補償)年金に認定された方が有利になるといえます。

傷病(補償)年金の請求手続

傷病(補償)年金を請求するには、療養開始から1年6ヶ月が経過した時点で「傷病の状態等に関する届(様式第16号の2)」を管轄の労働基準監督署に提出します。

傷病の状態等に関する届(様式第16号の2)
傷病の状態等に関する届(様式第16号の2)

通常は、療養開始後1年6ヶ月を経過したときに、労働基準監督署から自動的に申請の手続きをするように連絡がありますので、その指示に従って手続きを進めていけば大丈夫です。

傷病(補償)年金に該当したら?

傷病(補償)年金に該当した場合は、休業補償の代わりに年金が支給されることになるので、それまでの休業補償は請求する必要がなくなります

なお、治療代についてはそれまでどおり引き続き支給されます(別途、様式第6号などの提出が必要)。

傷病(補償)年金に該当しなかった場合はどうなる?

傷病(補償)年金の手続きは、長期間(1年半以上)の療養に渡る場合は必ず必要な手続きになっています。

手続きの結果、傷病(補償)年金に該当しなかった場合は、不支給通知が来ます。該当にならなかったとしても、それまでどおり休業補償を受給することは可能ですので、特に問題になることはありません。

コメント

  1. きー より:

    傷病の状態等に関する届はかかりつけの先生に記入して貰えばいいのですか?

  2. HANA HANA より:

    きー さん

    コメントありがとうございます。

    「傷病の状態等に関する届」は、先生ではなく、ご自分で記入するものになります。

    お大事になさってください。

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