うつ病の労災認定基準について(その1 概要編)

質問

仕事が原因でうつ病と診断されたため労災申請を考えています。うつ病の労災の認定基準について概略を教えてください。

答え

うつ病などの精神障害は、仕事によるストレス、仕事以外の私生活などによるストレス、その人がもともと持っている素因など、さまざまな要因により発病します。
うつ病の労災認定基準は、客観的に見て「仕事による心理的負荷が特に強い」と認められることです。

Author

下でくわしくお話するよ!

短時間で手っ取り早く見たい!という方は動画でどうぞ↓

うつ病が発病するまで

うつ病の労災認定基準

うつ病は、ストレス社会と呼ばれる昨今、非常に増えてきている病気で、精神科や心療内科はどこも患者さんであふれ、予約がいっぱいでなかなかすぐに受診できないことが多いようです。

仕事が原因でうつ病を発症する人も多く、恒常的な長時間労働を強いられたり、過剰なノルマを課せられたり、上司からのパワハラ・セクハラなどによりストレスが蓄積し、頭痛や不安症状などが出現したりして、精神科や心療内科を受診する方が増えています。

うつ病などの精神障害は、こういった仕事のストレス(心理的負荷)によるもののほかにも、家族や友人間などの人間関係の悩みや借金などの仕事以外の原因によるもの、さらにその人がもともとから持っている素因(うつ病の既往症、アルコール依存状況、生活史など 個体側要因と呼ばれています)など、さまざまな要因が関連し合いながら発病に至ると考えられています。

うつ病などの精神障害の発病に至るまで

(精神障害の労災認定パンフレットより)

このため、うつ病などの精神障害の労災認定についてはしっかりとした認定基準が定められており、仕事によるストレスが強いものと認められなければ認定はされないことになっています。

うつ病などの精神障害の労災認定基準

労災保険におけるうつ病などの精神障害の認定要件は以下のとおりです。

  1. 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
  2. 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
  3. 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

うつ病などの労災認定基準1

うつ病など精神障害の労災認定基準の1つ目はこちらです。

認定基準の対象となる精神障害を発病していること

「うつ病」は労災の精神障害の対象疾病に含まれていますが、「うつ病」以外にも「精神障害」と呼ばれる疾病はたくさんあります。当然のことながら、精神疾患を発病していて、その疾病が労災認定の対象になっていなければ補償されません

労災の「認定基準の対象となる精神障害」とは、世界保健機関(WHO)が作成した「ICD-10」の第Ⅴ章「精神および行動の障害」に分類される精神障害であって、分類コードF0とF1は除くとされています。

うつ病などのICD-10第Ⅴ章「精神および行動の障害」分類

(精神障害の労災認定パンフレットより)

このうち、業務に関連して発病する可能性のあるものはF2からF4までで、代表的なものとしては、以下のようなものがあります。

F2 統合失調症、統合失調症型障害および行動の障害

統合失調症、持続性妄想性障害、急性一過性精神病性障害など

F3 気分(感情)障害

うつ病エピソード、躁病エピソード、双極性感情障害など

F4 神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害

重度位ストレス反応および適応障害、恐怖症性不安障害など

「ICD-10」は「アイ・シー・ディー・テン」と読み、International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)の第10回修正版という意味です。これは、1990年の第43回世界保健総会において採択されたものですが、現在でも最新のものとして使用されています。

うつ病などの労災認定基準2

うつ病などの労災認定基準の2つ目はこちらです。

認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること

うつ病が労災として認定されるためには、当然ですが仕事による心理的負荷(ストレス)が原因でなければなりません。しかも、そのストレスの原因となった出来事が客観的に強いものと認められるかどうか(弱・中・強のうち強に該当する程度のものかどうか)が重要なポイントになります。

業務による心理的な負荷(出来事)としては、仕事中における事故や災害の体験、仕事上の重大なミス、過剰なノルマ、仕事内容などの大きな変化、退職の強要、嫌がらせやいじめ、パワハラ・セクハラ、長時間労働などがあり、これらの出来事による心理的負荷の強度により判断されます。

うつ病などの原因となった出来事が客観的に強いものと認められるかどうかが労災認定の重要なポイントになるとご説明しましたが、この「客観的に」について少し補足したいと思います。
「客観的に」とは「第三者から見て、うつ病を発症する原因として妥当かどうか」ということです。仮に本人にとってはすごく辛い出来事に感じたとしても、一般的に周りの人が「そのくらいで…」と感じるような出来事だったとすれば、「業務による強い心理的負荷」とは認められない可能性が高いと思います。

うつ病などの労災認定基準3

うつ病などの労災認定基準の最後の3つ目はこちらです。

業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

うつ病の原因が、プライベートなどの自分の出来事や、家族・親族の出来事、金銭関係のトラブルなどの仕事以外の心理的負荷や、精神障害の既往歴がある、アルコール依存症である、社会適応状況などの個体側要因によって発病したものではないかどうかについてもトータル的に検討されることになります。

以上、うつ病などの精神障害の労災認定の概要についてお話してきましたが、その他については、こちらの記事も参考にしてみてください。

管理人

まとめ

うつ病などの労災認定は、精神障害を発病してもおかしくないような強い出来事が仕事中にあったのかどうかということが大事になってくるということですね。
さらに、仕事以外のストレスも誰もが抱えていますから、それらも総合的に加味されて労災になるかどうかが判断されるということですね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました