仕事中に職場で暴力を受けた!

質問

私はタクシーの運転手をしています。先日、酔っ払ったお客様を乗せたとき、急に後ろから暴力を振るってきて、後頭部にけがを負ってしまいました。このような場合、労災になるのでしょうか。

ココがポイント
  • 暴力の場合、仕事中であったとしても労災になるときとならないときがあります。
  • 第三者行為災害になり、調査がおこなわれます。

こんにちは!『労災保険!一問一答』のHANAです。

『暴力を受けてけがをした場合は第三者行為災害になること』『仕事中のけがなのに労災にならないこともあること』についてお話していきます。

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下でくわしくお話するよ!

仕事中や職場での暴力行為は第三者行為災害に

職場の暴力

最近では、タクシーの運転手が客に暴力を振るわれたなどのニュースを目にする機会が増えました。また、「あおり運転」も世間的に注目されるようになり、仕事中でもいつ被害にあってもおかしくない世の中になってきています。

労災の「業務災害」とは、労働者が業務を遂行中にその業務に起因した危険によって被った災害をいいます。

タクシーの運転手さんは泥酔状態の客を乗せることも日常的にあり、酔っ払ったお客さんから突然暴力を振るわれたりすることは可能性として十分に起こり得るものと思います。質問のケースも、見知らぬお客さんから突然殴られたとのことですし、明らかにタクシーの運転業務と関連して起こった災害と思われるので、業務災害と判断され、労災になる可能性が高いと思われます。

なお、質問のケースでは、相手(第三者)の明らかな過失により被害を受けたわけですから、第三者行為災害に該当するため、第三者行為災害届などの必要な書類を提出後、労働局・労働基準監督署で調査が実施され、最終的に労災になるかならないか、相手との過失割合などが決定されることになります。

また、職場内での暴力などにより、負傷ではなく「うつ病」などの精神疾患を発症してしまったようなケースについては、精神障害での労災認定基準により判断されるため、以下の記事を参考にしてみてください。

暴力を受けても労災にならない場合もある!?

職場で暴力を振るわれたのに、労災にならないようなケースもあります。それは、「私怨や恣意的行為の場合」や「示談した場合」などです。

私怨や恣意的行為の場合

私怨(しえん)とは「個人的なうらみ」という意味です。恣意的行為(しいてきこうい)とは「自分勝手な行動」という意味です。

上司から職場内で暴力を受けた場合、仕事上必要な指導行為中と考えられるようなケースや、事故的なものと考えられるようなケースであれば労災になる可能性はあります。しかし、当人同士の個人的ないざこざなど、私怨や恣意的行為がからんでいるような場合は労災にならない可能性が高くなります。いざこざなどが原因でけんかや暴力に発展した場合は、すでに仕事を逸脱していると考えられるからです。

また、上のタクシーの暴力事件についても、たとえば下のような経過でけがをしてしまったような場合は労災にならない可能性が高くなります。

お客さん「道を間違えたな!ふざけんな!」

運転手「え?間違えてないですよ!」

お客さん「なんだ!?その態度!上等だ、表へ出ろ!」

運転手「そんなに酔っ払っている状態で俺に勝てると思ってるのか。」

その後、運転手とお客さんは車外に降りて5分ほど口論が続き、ついに頭にきたお客さんは運転手に暴力を振るい、これに応戦してケンカ状態に。これにより、運転手は頭部や顔面を負傷。

…なんてことになってしまった場合、口論となったキッカケはもちろん仕事にありますが、そこからお互い腹が立って殴り合いのケンカに発展し負傷した、つまり、

口論 → 腹が立つ → 殴られる → ケンカ状態に発展 → けが

となりますので、お互い腹が立ったことによって「私怨」に転化、つまり業務をとっくに通り越してしまってからの負傷との判断になりかねず、このようなケースでは仕事との因果関係がすでに失われているものと考えられ、労災にならないということも十分に考えられるわけです。

さらに、この運転手さんは車外に出る前に相手を挑発するような言葉を発していますので、これにより相手が刺激され、さらに大きいケンカに発展したとも考えられます。このような場合には、恣意的に自ら危険を招いたものとして、労災にならない可能性がさらに高くなります。

示談した場合

相手と話し合い(示談)をして、治療費や休業補償などを相手から直接、損害賠償を受けたような場合も労災保険から給付が受けられなくなります。当人どうしで話し合い(示談)をしてすべて取り決めをおこなってしまうと(全部示談といいます)、労災保険が入る余地がなくなってしまうからです。

おすすめの方法としては、示談をする場合、慰謝料などの項目だけにして労災保険分は含まれていない旨の示談書を交わすなどをすれば、全部示談とはみなされず労災保険の適用がある可能性が高くなります。このあたりは労働局・労働基準監督署に確認することをお勧めいたします。

管理人

最近、タクシーの乗務員さんが酔っ払ったお客さんに暴行される事件をニュースで目にしますが、ドライブレコーダーが普及してきたせいか逮捕される確率も上がってきているようです。お酒を飲んでもちゃんと節度をわきまえる、これ大事だと思います!(自分に言い聞かせています…)

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