下でくわしくお話するよ!
第三者行為災害とは
労災の第三者行為災害とは、車同士の交通事故のように、相手(第三者)がいて、その相手の行為(過失)によって労働者が業務災害又は通勤災害を被ったもので、その災害について第三者が損害賠償の義務を負う場合のことをいいます。
交通事故だったとしても、「電柱に衝突してけがをした」など、相手方がいない事故(単独事故)は第三者行為災害にはなりません。
第三者行為災害は通常の労災と少しちがう
普通の労災は、労災保険からけがをした本人に支払われます。
ところが、仕事中の交通事故で第三者行為災害に認定された場合、仕事中のけがですから労災保険に請求ができるほかに、交通事故ですから相手にも損害賠償請求ができることになります。
このような場合、同一の事故で二重に損害のてん補を受けられるとなれば、実際の損害額よりも多く補償を受けられることになってしまい不合理が生じます。
また、たとえば相手が100%悪い事故なのに労災保険から支払われるからといって相手は1円も支払わなくていいなんてことになっても、これまたおかしな話になるわけです。
このため、第三者行為災害は、「両者の過失割合」を決めたり、「だれがいくら支払うのか」などの調整が必要となるため、一般の労災とは区別して取り扱われています。
第三者行為災害になる例
労災の第三者行為災害のよくある例として、「交通事故」「同僚による災害」「イヌやネコの動物」「暴力行為」の4つの場合の例をご紹介しましょう。
交通事故
第三者行為災害の中でも、一番多いケースとして考えられるのが交通事故です。仕事中に車を運転する人は多いと思いますし、通勤にも自家用車やバイクなどを利用する人も多いと思います。
仮に、あなたが仕事で車を運転中に、対向車がセンターラインをはみ出してきて衝突してきたことによりけがをしてしまったとします。
この場合、あなたに特別な非がなければ、一般的にあなたと相手方の過失割合は「あなた0:相手100」となることが多いですので、相手方の不法行為によりけがをし、かつ、相手はあなたに対し損害賠償の義務を負いますから、労災保険の「第三者行為災害」に該当します。
過失割合が「50:50」の場合はどうでしょう。交差点などでの事故では、一般的にどちらか一方だけが100%悪いという判断になることは少なく、「相手が悪いのに…」と思っても「あなた20:相手80」になったり「あなた40:相手60」などと、あなたにも過失があると判断されてしまうことが多いです。
このような場合でも、相手に少しでも過失があれば、たとえば「あなた90:相手10」のようなケースであっても、10%は相手が悪いということがいえますから第三者行為災害は成立します。
なお、前方に停車していた車にあなたが後ろから衝突してしまったような場合など、過失割合が「あなた100:相手0」とあなたの一方的過失と判断できるケースでは、第三者行為災害にはなりません。相手がある災害ではありますが、相手には過失がない、つまり相手の不法行為でもなければあなたに対して損害賠償の義務もないということになるからです。
同僚による災害
同僚による第三者行為災害になるケースとしては、「工事現場で交通誘導をしていた警備員がバックしてきたトラックに轢かれてしまった」、「工場内で動いていたフォークリフトと接触してしまいけがをした」などが考えられます。
このような場合も、相手に過失があると判断され、トラックやフォークリフトの自賠責保険の適用があるなどの損害賠償責任が生じるような場合は、労災保険の第三者行為災害となります。
イヌやネコの動物
イヌやネコなどの動物による第三者行為災害の例をみていきましょう。
たとえば、「運送業者のトラックドライバーが配達中、玄関先でいきなり飛び出してきた飼いネコに足を咬まれた」ですとか、「通勤のためにバス停で待っていたところに散歩してきた犬に突然咬まれた」などのことが考えられます。
この場合、直接的に被害をもたらしたのはイヌやネコかもしれませんが、ペットがけがをさせてしまった場合、一般的には飼い主に責任があるということになりますね。飼い主が直接手を出したりしたわけではないですが、民法上の損害賠償責任があるのは飼い主ということになりますので、このような場合も飼い主を第三者とした「第三者行為災害」となります。
しかし、しっかりとケージに入れて飼っていたなど、飼い主としての管理はしっかりしていて特に問題はなかったのに、営業マンなどが個人的興味で犬やネコに余計なちょっかいを出してしまったことにより咬まれてけがをしてしまったようなケースなど、飼い主に過失がないと判断されるような場合もありますので、このような場合は第三者行為災害にはなりません。
このへんのことについては、イヌやネコなどのペットの飼い方など、お住いの地域の条例なども関わってきますので、このような事例があった場合は確認してみてください。
暴力行為
タクシー運転手が乗客から殴られた、パチンコ店の店員が負けて熱くなった客から暴力を振るわれたなど、仕事中や通勤途上において暴力行為を受けたような場合も「第三者行為災害」に該当します。
しかし、私怨などが絡んだことにより口論やケンカとなり、その結果、けがをしてしまったようなケースなど、そもそも労災保険の補償の対象とならないような場合もあります。(すでに業務を逸脱してしまったと判断されるため)
その他の第三者行為災害
今まで例にあげたもの以外にも、たくさんの第三者行為災害に該当するケースが考えられます。
「病院で認知症などを患った患者が急に暴れ出し、それを止めに入った看護師がけがをした」「ゴルフ場のキャディに飛んできたボールが当たった」「得意先まわり中に歩道を歩いていたらお店の看板が頭上から落ちてきて頭に当たった」など、さまざまなケースが考えられますが、その都度、相手に過失が問えるのか、損害賠償の義務を負うのかなど、個々に第三者行為災害に該当するかの判断をされることになります。
相手に過失があったとしても第三者行為災害としては取り扱われないものもあります。
それは、相手が労災保険の保険関係の当事者の場合、たとえば労災保険を運営している政府であったり、労災保険をかけている事業主であったりした場合は、第三者行為災害には該当しないことになっています。
第三者行為災害の場合の手続き
上記のように第三者行為災害に該当する場合は、労災の請求書のほかに第三者行為災害関連の書類の提出が必要になります。
提出しなければならない書類は大きく分けて「第三者行為災害届」と「その他添付書類」になります。
書類の入手方法につきましては、労災保険の請求書(申請書)様式・書類はどこからもらうの?を参考にしてください。
第三者行為災害届
第三者行為災害届の書き方・記入例については、第三者行為災害届の記入例と書き方を徹底解説を参考にしてください。
その他添付書類
第三者行為災害届などの提出先は?
第三者行為災害届やその他の添付書類の提出先は、管轄の労働基準監督署になります。
第三者行為災害の場合、病院に提出する「様式第5号」などの請求書とは別に提出が必要になりますので注意してください。
コメント
HANAさまはじめまして。
質問させてください。
先日、通勤に申請している経路・方法で通勤中に加害者自転車に衝突され交通事故に遭いました。
幸い加害者家族の加入している保険があり、事故当日より治療を受けています。
当方勤務会社への労災通知は行い、先日認可が出ましたが、会社より「労災給付を受ける場合は第三者行為災害届提出の上労災申請が必要」の旨通達がありました。
わたしはこれからどんな内容、方法で労災申請をすべきなのか、そもそも必要があるのか、いずれもわかりません。
わたしの状況としては
①事故発生から今日まで通院中で、まだ通院が終わるようには言われておりません。先述の通りお支払いは加害者側保険会社が行ってくれています
②怪我の状態から2ヶ月半の出勤停止がありましたが、ようやく復帰できたところです(その間給与は出ていました)
③診断名は「外部性警部症候群」「腰椎捻挫」「右肘右膝打撲傷」「右肘右膝挫傷」です。
④加害者側保険会社との折衝は弁護士に任せていますが、自動車保険特約での依頼だからなのか労災申請についてのアドバイスはあまりありません
また、相手方保険会社から当初「当方の過失は0」「労災は使わない(この意味がわからずにいます)」と言われています。
ぜひお知恵を貸していただけますと幸いです。
重ねて追加するべきことがあればご指示ください。
>よつばさん
コメントありがとうございます。
通勤中の交通事故などは労災保険や自賠責保険や任意保険など複数の保険が対象になり、どこに請求しようが基本的に自由ですが、重複して支給されることはありません。
病院代や通院の交通費(※対象にならない場合もあります)が保険屋さんから支給されていて、お給料は会社から全額支給されているのであれば、現時点で労災保険に請求するものはないように思います。(イコール労災に手続きは必要ないということになります)
今後、後遺障害が残るようなことがあれば、他保険と調整されない労災保険独自で支給できるものがありますので、その際は労基署に相談してみてください。
「労災は使わない」というのは、例えば病院代を労災に請求した場合、労災保険から病院に対し支払われますが、過失割合が100:0とのことから最終的には保険会社が労災保険側に支払わなければならなくなる等の調整が必要になるからだと思います。
HANAさま
早速のお返事ありがとうございます。
労災申請しなければ何かペナルティがあるのか、何をどうしたらいいのかと治療の合間に心配していたので肩の荷が降りました。
お話の通り、後遺障害が残るようなことがあればその際に労基署への問い合わせをしたいと思います。
またご相談することもあるかと思いますので、どうぞよろしくおねがいします。