下でくわしくお話するよ!
中小事業主等の特別加入制度
労災保険は、事業に雇用されている側のための保険ですので、通常、雇う側の人は労災保険の保護の対象にはなりません。
しかし、そんな社長さんや役員さんのような会社側の人でも特別に労災保険に加入できるという制度があります。これを「特別加入制度」といっています。
特別加入制度にも4つの種類があります。
この4種類の特別加入のうち、このページでは中小事業主等の特別加入の概要について説明していきます。
中小事業主等の特別加入ができる人は?
中小事業主の特別加入の対象となる人とは、中小事業主およびその中小事業主が行う事業に従事する人で労働者以外の人です。
ここでいう中小事業主とは、常時300人(金融業、保険業、不動産業、小売業は50人、卸売業、サービス業は100人)以下の労働者を使用する事業主となっています。
業種 | 労働者数 |
金融業 保険業 不動産業 小売業 | 50人以下 |
卸売業 サービス業 | 100人以下 |
上記以外の業種 | 300人以下 |
「中小事業主が行う事業に従事する人で労働者以外の人」とは、たとえば事業主の家族従事者ですとか、法人などである場合は代表者以外の役員が該当することになります。
また、常時300人以下の労働者の「常時」とは、「年間を通して100日程度以上、労働者を雇用している場合」を目安としているようです。
特別加入の手続をするには?
中小事業主の特別加入の手続きについてお話していきます。
中小事業主等の特別加入をするには労働保険事務組合に事務委託をする必要がある
労災の特別加入をするためには、「労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託していなければならない」という決まりがあります。事務委託をしていない場合は、労働保険事務組合に事務を委託するところから始める必要があります。
労働保険事務組合は各都道府県に複数ありますので、管轄の労働局・労働基準監督署で労働保険事務組合の名簿一覧などをもらい、その中からお好きな事務組合を選ぶという方法が良いと思います。
労働保険事務組合に事務委託するとどうなる?
労働保険事務組合に事務委託することで、労災の特別加入制度が利用できるようになるほか、労働者分の年度更新手続きなどもやってもらえますので、事務負担軽減になります。
ただし、事務を委託するわけですから、保険料の他に事務委託手数料などがかかるといった金銭的な負担が増えます。保険料はどこの事務組合でも同じですが、手数料などは各事務組合によって異なります。
特別加入の手続きは事務組合を通しておこなう
特別加入をするためには、「特別加入申請書(中小事業主等)」を労働基準監督署に提出する必要がありますが、この手続きは労働保険事務組合を通して行うことになりますので、通常は事務組合がおこなってくれます。
特別加入する際の注意点
中小事業主等の特別加入をする際、2つほど注意しなければいけないことがあります。
1つは、中小事業主は、家族従事者や役員などがいる場合、それら全員を包括して加入させなければならないということです。
特別加入の対象者が複数いれば、その中で危険が高い作業をしている人だけ入りたいといっても無理ということですね。ただし、病気療養中であったり、高齢などの理由で業務に従事していないような場合は、それを申し出ることで包括加入の対象から除くことも可能です。
もう1つは、仕事中であれば全て労災がきくということではないということです。
特別加入制度はあくまでも労働者保護という建前のもと確立された任意保険制度ですので、原則、労働者に準じた業務中の負傷などでなければ補償の対象とはなりません。したがって、事業主としての本来業務、たとえば法人などの執行機関として出席する株主総会、役員会、資金繰りなどを目的とした得意先の接待業務などにおいてのけがなどは、労災保険の対象とはならないことになります。
また、時間帯についても制約があり、雇用している労働者の所定労働時間やそれに附帯して準備や後始末をする時間しか対象になりません。たとえば、労働者の就労時間が終わり、夜に1人で作業をしていたときにけがをしても労災保険の給付対象にはならないということになります。
特別加入の保険料はいくらくらいかかる?
特別加入の保険料はいくらくらいかかるのでしょうか。
それは、選ぶ「給付基礎日額」と「業種」によって変わってきます。
特別加入者の給付基礎日額
特別加入者は、賃金を受けて労働に従事しているわけではありませんので、一般の労働者のようにけがをしたときの賃金から給付基礎日額を計算できません。
ですから、特別加入するときや更新をするときに、特別加入者の収入を考慮して実態に近い給付基礎日額を3,500円から25,000円の範囲から選び、保険加入することになっています。
給付基礎日額は、支払う保険料を決定する基礎になりますし、休業補償などの給付を受けるときにもこの金額が基礎となり給付額が決定されることになります。
保険料を計算してみよう!
業種がトラック運送業などの「貨物取扱事業」で、給付基礎日額が10,000円(年間の収入が365万円程度)の人の場合で特別加入保険料がいくらになるのか計算してみましょう。
【計算】
給付基礎日額 10,000円 × 365日 × 保険料率 9/1000 = 32,850円
この場合、32,850円が年間の特別加入の保険料として支払わなければならない額になります。
次に、業種が卸売業や小売業の場合で、給付基礎日額が5,000円の人の場合はどうでしょう。
【計算】
給付基礎日額 5,000円 × 365日 × 保険料率 3/1000 = 5,475円
この場合、5,475円が年間の保険料として支払わなければならない額になります。
このように、選ぶ給付基礎日額や業種によって保険料にはかなり幅が出ます。
なお、業種ごとの保険料率は、以下のページをご覧ください。
おわりに
一般の労働者が加入する労災保険はいわゆる「強制保険」ですが、それに対し特別加入は「任意保険」です。
なので、当然加入していなければ補償されません。保険の効力は、申請をして承認を受けた日以降からになりますので、気をつけて下さい。