労働保険の対象となる「労働者」の範囲、加入条件とは

質問

労働保険(労災保険と雇用保険)の対象者の範囲に臨時労働者は含まれるのでしょうか。労働保険の加入条件についてくわしく教えてください。

答え

労働保険(労災保険と雇用保険)の対象者の範囲や加入条件についてご説明します。

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下でくわしくお話するよ!

労災保険と雇用保険の対象者の範囲とは?加入条件は?

労働保険(労災保険と雇用保険)の対象者の範囲、加入条件とは

労災保険(仕事中や通勤途中にけがをしたときなどの保険)と雇用保険(失業したときの保険)を総称して『労働保険』と呼ばれています。

労働保険の対象になる「労働者」の範囲、それぞれの加入条件について、労災保険と雇用保険に分けて説明していきます。

労働保険の対象者

労災保険と雇用保険の対象者はこのようになっています。

労災保険

臨時労働者、常用、日雇い、アルバイト、パート、出向、派遣など、名称や雇用形態にかかわらず、労働の対償として賃金を受けるすべての人が対象です。

雇用保険

臨時労働者、常用、パート、アルバイト、派遣など、名称や雇用形態にかかわらず、

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上の雇用見込みがある場合

この2つの条件を満たす場合に、原則として雇用保険の対象になります。

対象者を雇用したときの手続きは?

上記の加入条件を満たす労働保険の対象者を雇用したときの手続きについて説明します。

労災保険

雇用された時点で(自動的に)対象になりますので、雇用労働者ごとの届け出は必要ありません。(年に1回、年度更新手続きで対象労働者の賃金を申告するかたちです)

なお、初めて労働者を雇用した場合は新規加入の手続きが必要です。

雇用保険

新たに対象労働者を雇用した場合は、その都度、公共職業安定所(ハローワーク)に「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。

反対に、雇用保険被保険者が離職した場合は、公共職業安定所(ハローワーク)に「雇用保険被保険者資格喪失届」と、失業給付額等の決定に必要な「離職証明書」の提出が必要になります。

こんな人は対象になるの?

労災・雇用保険の対象者

こんな人は労災保険や雇用保険の対象になるの?と悩むケースがあると思います。よくあるケースについて説明していきます。

法人の役員(取締役)は労働保険の対象者?

労災保険

代表権や業務執行権を持っている役員は、労災保険の対象にはなりません。

業務執行権とは、株主総会や取締役会の決議を実行したり、日常的な取締役会の委任事項を決定・執行する権限のこと、つまり、代表者が行う対外的代表行為を除く会社の諸行為のほとんどすべてを行う権限をいいます。

  1. 法人の取締役・理事・無限責任社員などであっても、業務執行権を持たず、かつ業務執行権を持つ取締役・理事・代表社員などの指揮監督を受けて労働に従事し、その対償として賃金をもらっている人は、原則「労働者」となります。
  2. 法令や定款の規定により、業務執行権を持たない取締役などでも、取締役会規則などによって業務執行権を持つと認められる場合は「労働者」にはなりません。
  3. 監査役・監事は、法令上、使用人を兼ねることをを得ないものとされていますが、事実上、一般の労働者と同様に賃金を得て労働に従事している場合は「労働者」になります。

雇用保険

株式会社の取締役は、原則、対象になりません。

ただし、取締役であって、同時に部長・支店長・工場長などの従業員としての身分を持つ人は、労働者的性格が強く雇用関係にあると認められる人は「被保険者」になります。

  1. 代表取締役は被保険者になりません。
  2. 監査役は原則、被保険者になりません。

また、株式会社以外の役員については以下のとおりとなります。

  • 有限会社、合名会社、合資会社、合同会社の社員は株式会社の取締役と同様で、原則、被保険者にはなりません。
  • 農業協同組合などの役員は、雇用関係が明らかでない限り被保険者になりません。
  • その他法人、または法人格のない社団や財団の役員は、雇用関係が明らかでない限り被保険者になりません。

事業主と同居している親族は労働保険の対象者?

労災保険

事業主と同居の親族は、原則、対象者にはなりません。

ただし、同居の親族であっても、常時、一般の労働者を使用する事業において、下記の条件を満たす人は、一般に私生活面での相互協力関係とは別に独立して労働関係が成立しているとして対象者になります。

  1. 業務を行うにつき、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること
  2. 就労の実態が他の労働者と同様で、賃金もこれに応じて支払われていること。特に、始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇など、また賃金の決定・計算・支払方法、賃金の締め切りや支払いの時期について、就業規則などによりその管理が他の労働者と同様になされていること。

雇用保険

原則として、被保険者にはなりません。

ただし、次の条件を満たしていれば被保険者となります。

  1. 業務を行うにつき、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること
  2. 就労の実態が他の労働者と同様で、賃金もこれに応じて支払われていること。特に、始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇など、また賃金の決定・計算・支払方法、賃金の締め切りや支払いの時期について、就業規則などによりその管理が他の労働者と同様になされていること。
  3. 事業主と利益を一にする地位(役員など)にないこと

出向労働者の労働保険の適用は?

労災保険

一般的に、出向先において適用になります。

出向労働者が出向先事業組織に組み入れられ、出向先事業主の指揮監督を受けて労働に従事する場合は、出向元で支払われている賃金も出向先で支払われている賃金に含めて計算し、出向先で対象労働者として適用することになります。

雇用保険

一般的に、出向元において適用になります。

ただし、出向元と出向先の2つの雇用関係を持つ出向労働者は、同時に2つ以上の雇用関係にある労働者に該当するため、生計を維持するのに必要な主たる賃金を受ける方の雇用関係についてのみ被保険者になります。

派遣労働者の労働保険の適用は?

労災保険

原則として、派遣元(派遣会社)で適用します。

派遣先は、特に手続きは必要ありません。

雇用保険

派遣元での適用となります。

派遣先は、原則として手続きは必要ありません。

日雇い労働者は労働保険の対象者?

労災保険

すべて対象者となります。

雇用保険

日々雇用される人、または30日以内の期間を定めて雇用される人のうち、日雇い労働者で生計を立てている人は日雇労働被保険者となります(臨時・内職的な場合は該当しません)。

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