労災の特別支給金とは
労災の『特別支給金』とはざっくり言うと、本来もらえる保険給付に上乗せしてもらえるお金のことです。
たとえば、休業補償ではだいたい「8割」が支給されると言われています。厳密にいうと、本来もらえる「保険給付」は「6割」と決められているのですが、これに「特別支給金」の「2割」が上乗せされて「8割」もらえるという計算になっています。
労災をもらうときに送られてくる「支給決定通知書」を見ても、支給決定金額の欄は『保険給付額』と『特別支給金額』の2段に分かれていて、その合計が支払われるようになっていますね。
特別支給金の申請は保険給付の手続きと同時におこなう
休業補償の特別支給金の申請は、保険給付の請求手続きと同時におこなうのが原則になっています。
労災の様式8号の書類をみていたければわかりますが、表題部分は「休業補償給付支給請求書」と「休業特別支給金支給申請書」の二段書きになっています。これは、通常の保険給付の請求と特別支給金の申請を同時におこなえるようになっているということです。
したがって、様式8号を提出すれば、自動的に特別支給金もあわせて申請していることになっていますので、通常は特に何もすることはありません。(※一部例外を除きます。下の「特別支給金は他と調整されない」をご覧ください。)
休業補償に限らず、障害補償や遺族補償など、労災の請求書はほとんどがこのようになっていて、特別支給金もあわせて手続きをおこなえるようになっていますので、特別支給金を申請するにあたり通常は特別な手続きは必要ありません。
特別支給金は他と調整されない
仕事中の交通事故などで自賠責保険も対象になる場合、二重にもらうことを防ぐため、労災から本来もらえる「保険給付」の部分は調整され、減額されてしまいます。自賠責保険からの給付で全額まかなえるときは、労災から1円ももらえないときもあります。
しかし、「特別支給金」は、労災保険独自で支給できるもので他と調整されない性質のため、自賠責保険などから全額支給されていたとしても、申請すれば特別支給金だけはもらうことができます。
これで、休業損害は自賠責保険からもらうから「保険給付」は請求しないけど、「特別支給金」だけは申請しますよ♪という意味になります。
特別支給金には休業特別支給金のほかにもいろいろな種類がありますので(下で説明しています)、あてはまる場合は忘れずに申請の手続きをするようにしましょう。
労災保険は労働者に対して必要な保険給付をおこなっている他にも、労働者の福祉の増進に寄与することを目的とした『社会復帰促進等事業』をおこなっています。これは通常の保険給付に附帯しつつ、これを補うためにおこなわれているものです。
社会復帰促進等事業は、「被災労働者の円滑な社会復帰の促進」「被災労働者とその遺族の援護」「安全と衛生の確保事業」の3事業を柱としており、義肢等の支給やアフターケア、労災病院や介護施設の運営、未払賃金の立替払いなど(他にも多数の事業)が行われていますが、この中に『特別支給金の支給』が含まれています。
したがって、特別支給金は、法律の条文も違えば、お金の出どころも違うということですね。
特別支給金の種類はどんなものがある?
労災の特別支給金の種類は全11種類あり、それぞれについて紹介します。
休業特別支給金
仕事中や通勤途中のけがなどの療養のために働くことができず賃金をもらえないときに支給されるものです。
支給内容
休業1日につき、給付基礎日額の2割程度の金額が、休業4日目以降にもらえます。
障害特別支給金
労災のけがなどが症状固定したときに、身体に後遺症が残った場合に支給されるものです。
支給内容
残った障害の重さ(障害等級)によって、もらえる金額が変わります。
障害等級 | 特別支給金 |
---|---|
第1級 | 342万円 |
第2級 | 320万円 |
第3級 | 300万円 |
第4級 | 264万円 |
第5級 | 225万円 |
第6級 | 192万円 |
第7級 | 159万円 |
第8級 | 65万円 |
第9級 | 50万円 |
第10級 | 39万円 |
第11級 | 29万円 |
第12級 | 20万円 |
第13級 | 14万円 |
第14級 | 8万円 |
障害特別一時金
障害等級が第8級から第14級の人のうち、ボーナス(賞与)などの支給があった人に支給されるものです。
支給内容
残った障害の重さ(障害等級)によって、もらえる金額が変わります。
障害等級 | 特別支給金 |
---|---|
第8級 | 算定基礎日額の503日分 |
第9級 | 算定基礎日額の391日分 |
第10級 | 算定基礎日額の302日分 |
第11級 | 算定基礎日額の223日分 |
第12級 | 算定基礎日額の156日分 |
第13級 | 算定基礎日額の101日分 |
第14級 | 算定基礎日額の56日分 |
障害特別年金
障害等級が第1級から第7級の人のうち、ボーナス(賞与)などの支給があった人に支給されるものです。
支給内容
残った障害の重さ(障害等級)によって、もらえる金額が変わります。下の表の金額が「年額」として年金に上乗せされて支給されます。
障害等級 | 特別支給金 |
---|---|
第1級 | 算定基礎日額の313日分 |
第2級 | 算定基礎日額の277日分 |
第3級 | 算定基礎日額の245日分 |
第4級 | 算定基礎日額の213日分 |
第5級 | 算定基礎日額の184日分 |
第6級 | 算定基礎日額の156日分 |
第7級 | 算定基礎日額の131日分 |
障害特別年金差額一時金
障害(補償)年金をもらっている人が不幸にも亡くなってしまった場合、それまでに支給された金額がそれぞれの障害等級ごとの最低保障に満たないときに、その差額が遺族に対して支給されます。
支給内容
下の表の金額とすでに支給済みの金額の差額が支給されます。
障害等級 | 特別支給金(最低保障) |
---|---|
第1級 | 算定基礎日額の1340日分 |
第2級 | 算定基礎日額の1190日分 |
第3級 | 算定基礎日額の1050日分 |
第4級 | 算定基礎日額の920日分 |
第5級 | 算定基礎日額の790日分 |
第6級 | 算定基礎日額の670日分 |
第7級 | 算定基礎日額の560日分 |
遺族特別支給金
仕事中や通勤途中の災害などにより死亡した場合に、遺族に対して支給されるものです。
支給内容
一律300万円
遺族特別一時金
仕事中や通勤途中の災害などにより死亡した場合で、遺族(補償)年金を受けることができる遺族がいないときに、一時金として遺族に対して支給されるものです。…①
また、遺族(補償)年金を受ける権利がなくなってしまったときに、支給済みの金額が算定基礎日額の1000日分に満たないときに、遺族に対しその差額が支給されますが、これも遺族特別一時金と呼ばれています。…②
支給内容
①算定基礎日額の1000日分
②算定基礎日額の1000日分と支給済みの遺族特別年金との差額
遺族特別年金
遺族(補償)年金の受給権者に対し、年金に上乗せされて支給されます。
支給内容
遺族の人数によって、もらえる金額が変わります。
遺族数 | 特別支給金 |
1人 | 算定基礎日額の153日分 ただし、55歳以上の妻もしくは一定の障害状態 にある妻の場合は算定基礎日額の175日分 |
2人 | 算定基礎日額の201日分 |
3人 | 算定基礎日額の223日分 |
4人以上 | 算定基礎日額の245日分 |
傷病特別支給金
療養を開始してから1年6ヶ月以上を経過した日以降も傷病が治っておらず、労災保険が定める傷病等級に該当する状態のときに支給されます。
支給内容
傷病の重さ(傷病等級)によって、もらえる金額が変わります。
傷病等級 | 特別支給金 |
---|---|
第1級 | 114万円 |
第2級 | 107万円 |
第3級 | 100万円 |
傷病特別年金
傷病(補償)年金をもらっている人のうち、ボーナス(賞与)などの支給があった人に支給されるものです。
支給内容
傷病の重さ(傷病等級)によって、もらえる金額が変わります。下の表の金額が「年額」として年金に上乗せされて支給されます。
傷病等級 | 特別支給金 |
---|---|
第1級 | 算定基礎日額の313日分 |
第2級 | 算定基礎日額の277日分 |
第3級 | 算定基礎日額の245日分 |
未支給の特別支給金
特別支給金をもらう権利がある人が死亡した場合に、まだ支給していなかった分があるときは、遺族に対して未支給の特別支給金が支給されます。