労災治療っていつまで受けられるの?

質問

私は労災で治療を続けていますが、労災の適用期間がいつまでなのかがわからず、いつ労災を切られてしまうのか不安です。労災はいつまでの期間、治療を続けることができるのでしょうか。

ココがポイント
  • 治癒または症状固定の状態になるまでです。
  • 症状固定した後も「障害」「アフターケア」「再発」などの制度があります。
  • 休業補償は別のお話になります。

こんにちは!『労災保険!一問一答』のHANAです。

『労災の治療はいつまで続けられるのか?』『労災が終わってしまった後はどうなるのか?』についてお話していきます。

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下でくわしくお話するよ!

労災の治療はいつまで受けられるか

労災はいつまでもらえる

労災はいつまで受けられるかということですが、結論からいえば、その傷病が「治る」まで治療が受けられるということになります。

ただし、この「治る」の解釈は、一般的に使われる「治る」の意味と少し違います

一般的に使われる「治る」は「完全にもとに戻る」という意味で使われることが多いと思います。もちろん、そのとおり完全にけがをする前の状態に戻ることが一番良いに決まっていますね。

しかし、労災保険ではこの「治る」について、完全に回復した状態だけをいうのではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療をおこなっても、その医療効果が期待できなくなった状態をいうとされています。

この状態のことを「治癒(ちゆ)または症状固定」といっています。

治癒または症状固定とは?

たとえば、指を一本、完全に失ってしまったとします。これをいくら頑張って治療を続けたところで、現代の医学では元通りに指が生えてくるわけではありませんね。

ですから、ある程度、切断面の創の処置や、感覚的な部分などが再建され、痛みやしびれなどの症状が落ち着いた時点で「治癒(症状固定)」となります。

また、「傷病の症状が、投薬・理学療法などの治療により一時的な回復がみられるにすぎない場合」など、痛みなどの症状がまだ残っていても、医療効果が期待できないと思われるときは「治癒(症状固定)」と判断されてしまうことになります。

労災保険では、この「治癒(症状固定)」の状態になった時点で、療養の給付や休業補償などを受けることができなくなります

労災の適用期間はいつまで

たとえば、「頚椎捻挫」などでは首に長く痛みが残るケースが多いですが、痛み止めの注射を打つことにより一時的に症状が良くなっても、数日後にはまた元に戻るというような状態なら、「治癒(症状固定)」に近い状態と言えると思います。

このままの状態が続けば、「症状が安定」し「医療効果が期待できない」と判断され、労災が切られてしまうことが考えられます。

管理人

ちなみに、「休業補償はいつまでか」ということですと、また別のお話になります。「治療はいつまで受けられるか」と「休業補償はいつまで受けられるか」は、判断基準が違いますので、それぞれ別個に考える必要があります。

休業補償につきましては、休業補償はいつまでの期間もらえるの?上限はあるの?をご覧ください。

症状固定しても後遺症があれば障害(補償)給付が請求できる

「治癒(症状固定)」となった場合は、それ以降の治療費などの療養の給付、休業補償などは支給されなくなりますが、「首の痛みが残った」「指を切断した」などの障害が残ってしまった場合、その障害が労災保険の障害等級に当てはまれば、その重さに応じた障害(補償)給付が支給されます。

アフターケアについて

労災保険では、「治癒(症状固定)」した後においても診察などが受けられる場合があります。

せき髄損傷や頭頸部外傷症候群など、対象となる傷病が限定されていますが、治癒(症状固定)したあとも後遺症状が変化したり、後遺障害に付随して別の傷病が発症してしまう可能性があることから、その予防や措置のために一定の範囲で診察や検査、薬剤の支給などが認められています。

これを「アフターケア」といいます。

再発について

「治癒(症状固定)」となり労災が終了してしまっても、その後に再びその傷病を発症してしまうこともあります。これを「再発」と呼んでいます。

労災保険の「再発」は、次の要件をすべて満たした場合に限り「再発」と認定され、再び治癒(症状固定)の状態になるまで療養の給付や休業補償などを受けることができるようになります。

  • 症状固定のときの状態からみて、明らかに症状が悪化していること
  • その症状の悪化が、当初の傷病と相当因果関係があると認められること
  • 療養を行えば、その症状の改善が期待できると医学的に認められること
管理人

まとめ

・労災の治療は、治癒(症状固定)になるまで続けられる!
・症状固定しても、障害(補償)やアフターケアや再発などの給付を受けられる場合がある!
・治療と休業補償の上限はそれぞれ違う!

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ネコ太郎
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管理人
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コメント

  1. 山下 より:

    仕事ができるようになったものの、定期的な通院がまだ必要となる場合の医療費は、労災治療費として認められるのでしょうか?

  2. HANA HANA より:

    コメントありがとうございます。

    「仕事ができるようになったから医療費の支給もストップされる」ということではありませんのでご安心ください。

    ケースバイケースですが、仕事ができるようになっても治療継続はまだ必要という状況は往々にしてあることです。

    休業補償の支給要件と治療継続の要件は別物ですので、この場合、休業補償は支給されなくなってしまいますが、治療の継続は症状固定と判断されるまでは可能と思われます。

  3. セミ より:

    帰宅途中でケガをしてひざの人口関節手術を受ける予定です。
    労災適用は障害年金が受給不可と社労士の方から説明があり、症状固定後に障害給付を受給出来る可能性があると聞きました。
    障害給付に該当するのか、また障害の等級が何給になるのか教えてほしい。

  4. HANA HANA より:

    >セミさん

    コメントありがとうございます。

    社労士の方がおっしゃるとおり、症状固定するまでは障害給付の対象にはなりません(その間は治療費や休業補償などが支給対象になります)。

    症状固定後に、残った障害の程度により障害等級が何級になるのかが判断され、それにより給付金が決定されることになります。ちなみに、労災の障害等級は1級〜14級まであり、7級以上は年金に、8級以下は一時金になります。後遺障害については、こちらの記事に書いていますので、よろしければご覧ください。

    膝の人工関節の場合、それだけで「10級」になります。
    さらに、人工関節+膝の動き(関節可動域)が半分以下になったりすると「8級」に上がったり、痛みや傷の程度などにより障害等級が変わる可能性もあります。

    お大事にしてください。

  5. ハバナ より:

    労災について、当社は待機期間(3日間)中については、特別有給(有給日数が減らない有給休暇)で処理しております。
    待期期間の後は労災保険から休業補償がされますが、休業期間が4日間であった場合、もう一日(4日目)も特別有給で処理することはできるのでしょうか。
    一日のために私傷病報告を出すくらいなら、それでも構わないという方針なのですが、問題ありますでしょうか。

  6. HANA HANA より:

    >ハバナさん

    コメントありがとうございます。

    >休業期間が4日間であった場合、もう一日(4日目)も特別有給で処理することはできるのでしょうか。

    可能です。4日目以降の賃金を会社が全額補償するのなら、労災保険に休業補償の請求をする必要はありません。

    >一日のために私傷病報告を出すくらいなら、それでも構わないという方針なのですが、問題ありますでしょうか。

    これはNGです。「死傷病報告」と「休業補償の請求」は別物と考えてください。
    「死傷病報告」は休業4日以上の業務災害の場合、必ず提出する必要があるものです。4日目以降の賃金を会社が負担したからといって、「死傷病報告」を提出しなくていいということにはなりませんので注意してください。

  7. ぶんさん より:

    運送業を営んでいる人事の者です。従業員が業務中に右手を打撲し病院で治療を受けたところ骨には異常なく少し腫れている程度なのですが、診断書で二週間安静と出ました。本人は休みたくないとの事で運転業務からは外し軽いデスクワークをやらせようと思います。その際、治療にかかる費用は労災保険でまかない、就労した分に関しては給料として支払う事は可能ですか?それとも、労災保険を使用している期間は休ませたほうがよろしいですか?よろしくお願いします。

  8. HANA HANA より:

    >ぶんさん さん

    コメントありがとうございます。

    >労災保険を使用している期間は休ませたほうがよろしいですか?

    そんなことはありません。一般的に働ける状態なのであれば、仕事をしながら治療を続けている人も普通にいらっしゃいます。ご本人も希望されているとのことですし、軽いデスクワークなら負担も軽いと思います。

    ただ、もし給料が下がる見込みなのであれば、トラブル防止のためにその辺りのことはご本人に予め説明しておいた方が良いかもしれませんね。

  9. ヒロ より:

    HANAさん 何度かお世話になっております。ありがとうございます。
    昨年8月帰宅途中の交通事故で、搬送された病院では、左腓骨近位部骨折・頸椎捻挫・右膝打撲・右足関節挫傷という病名がつき、退院後は近所の病院へ転院し、今現在は左腓骨近位部骨折(転院先の病院では休業給付支給申請書にはこの病名だけ記載されています)で現在リハビリをしているところです。
    事故当初から医師には伝えていたのですが、この度、左膝内側の痛みが強くなり(骨折部の痛みがなくなってきたのもあり膝内側の痛みを強く感じるようになったようです)20年ほど前に前十字靭帯断裂という診断を受けており、元々左膝は丈夫ではありませんでしたがここ10年ほどは痛みは全くなく仕事も身体介助が主である介護職を長年続けてこれています。今回の事故で痛みが出てしまい歩行にも影響が出ているので先生からは手術を勧められています。
    この度、リハビリの期間150日が経つので担当医が病名を左膝変形性膝関節症でリハビリは続けていけるとのことでしたが、病院労災担当受付の方から月13単位(260分)のリハビリになる事と、もし今まで通りのリハビリ(現在週3~4回通っています)を続けたいとなると自費になるかもしれません(労基署の判断なので今はどちらとも言えない)との話しがありました。今は少しでも足の筋力を付けるためリハビリして手術に臨み、1日も早い復職に向けてがんばりたいと考えています。症状固定のお話はまだ出ておりません。私としてはこの事故がなければ手術を受ける予定は全くなく、通常通り仕事もしていました。
    長くなりましたが、お聞きしたいことは
    1.このような状況の場合、どこまで労災で認められる可能性はあるのでしょうか
    どうぞよろしくお願いいたします(__)

  10. HANA HANA より:

    >ヒロさん
    コメントありがとうございます。
    労災の治療は、基本的には「症状固定するまで」受け続けることが可能なのですが、症状固定の時期は明確になりづらい場合も多く、そういった場合は一般的に労基署と主治医との間で、他覚的初見、療養の内容、治療の効果の有無、今後の治療見込み等を考慮しながらその時期を決定していくことになります。
    労基署は割と寛容な方だとは思いますが、ヒロさんのお話しから想像するに、治療開始から一定の時期が経過していることや、手術が必要な理由、現在の痛みの原因、左膝変形性膝関節症と事故との因果関係等も考慮材料になりそうです。
    「どこまで労災で認められる可能性があるか」とのご質問ですが、それらのことを検討して判断されるため、手術やその後の当面の治療、リハビリまで労災で認められる可能性もありますし、反対に手術は労災と認められないというようなこともあり得るかと思います。

  11. ヒロ より:

    HANAさん 早々にお返事くださってありがとうございます。
    そうなのですね^^大変よく分かりました!
    この度も本当にありがとうございました。

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