下でくわしくお話するよ!
平均賃金と給付基礎日額
労災保険から給付されるものは、労働者の収入などに応じて計算された「給付基礎日額」をもとに支給されるものが多いです。
これは、労災保険がその労働者が負傷したり病気にかかってしまったことによってその人がどれだけ損失が生じたのか、その部分を補填する目的のもの、いわゆる逸失利益的な考え方のもと給付される性格のものだからです。
たとえば、全く同じけがをした場合でも、月に30万円の給料をもらっていた人と月に10万円の給料をもらっていた人では、給付基礎日額が変わりますので、支給される金額に差が出ます。
- Aさんの給料は30万円
- Bさんの給料は10万円
Aさんの方が収入が多いので給付基礎日額が高くなる!
労災保険から給付されるときの基礎になるのは「給付基礎日額」ですが、これは基本的には労働基準法上の「平均賃金」がもとになって決められるものです。まずは平均賃金についてご説明したいと思います。
平均賃金とは
平均賃金とは、その負傷の原因となった事故が発生した日の直前(賃金の締切日が決められている場合は、その日の直前の締切日)からさかのぼって3ヶ月間に、その労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割った1日あたりの賃金額のことをいいます。
一般的には「月末締めの翌月25日払い」など、賃金の締切日が決められている場合が多いと思いますので、けがをした日の直前の賃金締切日からさかのぼる3ヶ月間で平均賃金を計算することになります。
平均賃金を計算してみよう
実際に具体例を見ながら平均賃金を計算してみましょう。
Aさんが「12月15日」にけがをしてしまった場合を例に平均賃金を計算してみましょう。
まず、賃金の締切日が月末ですから、けがをした日の直前の締切日は「11月30日」になります。
平均賃金は、けがをした日の直前の賃金締切日からさかのぼる3ヶ月間で計算します。11月30日からさかのぼる3ヶ月間は「9月1日から11月30日」の期間になりますので、この間の暦日数は「9月→30日間、10月→31日間、11月→30日間」で、合計「91日間」になります。
また、この3ヶ月間に支払われた賃金の総額は、「30万円×3ヶ月間」で「90万円」になります。
- 3ヶ月の給料の合計 30万円×3ヶ月=90万円
- 3ヶ月間の暦日数 9月→30日間、10月→31日間、11月→30日間=91日
平均賃金は、賃金の総額を暦日数で割ったものになりますので、計算してみると、
90万円 ÷ 91日 = 9,890.10989…
となります。
ここで、平均賃金の決まりごとがあります。
- 平均賃金は「円」の下の単位の「銭」まで出す。
- 「銭」未満の端数は切り捨てる。
平均賃金はこのようになっています。
したがいまして、「9,890.10989…」この場合の平均賃金は9,890円10銭になります。
90万円 ÷ 91日 = 9,890.10989…
平均賃金は「9,890円10銭」
なお、雇用期間が3ヶ月間に満たないなど、平均賃金をうまく計算できない場合があります。そのような場合は、下のページも参考にしてみてください。
平均賃金算定内訳の記入例
平均賃金算定内訳の具体的な書き方、記入例については以下のページを参考にしてください。
【平均賃金のまとめ】
平均賃金は、賃金の総額を暦日数で割ったもの!
「銭」単位まで出す!
給付基礎日額とは
つづいて「給付基礎日額」についてですが、「給付基礎日額」は原則「平均賃金」に相当する額となっていますので、基本的には難しくありません。
ただ1つ、一般的に給付基礎日額は、円未満の端数は切り上げて円単位にするということになっていますので、上記の例(平均賃金9,890円10銭)の場合の給付基礎日額は、9,891円になります。
実際に休業補償などが給付されるときには、この給付基礎日額「9,891円」という金額をもとに計算されることになります。
給付基礎日額算定の特例措置について
「給付基礎日額」は、原則「平均賃金」に相当する額とご説明しましたが、この「原則」に当てはまらないこともあります。
それは、労災保険法で「平均賃金に相当する額を給付基礎日額とすることが適当でないと認められるときは、厚生労働省令で定めるところによって所轄労働基準監督署長が算定する額を給付基礎日額とする」とされているからです。
たとえば、平均賃金の金額がとても少なく、最低保障額に満たないような場合は最低保障額まで給付基礎日額が引き上げられて支給されますし、反対に年齢階層別の最高限度額に引っかかってしまい限度額まで下げられて支給されるような場合もあります。
また、給付基礎日額には一定の期間ごとの賃金水準の変動に応じて額が改定されるスライド制というものがあり、この適用になれば、金額が上がったり下がったりする場合もあります。
給付基礎日額が上下する例
給付基礎日額算定の特例措置となる例としては、以下のような場合があります。
- 平均賃金を計算したら「2,366円13銭」にしかならなかったが、最低保障額「4,020円(令和5年8月現在)」に満たないため、「4,020円」まで引き上げられて休業補償が計算された
- 今まで給付基礎日額「14,876円」で給付を受けていたが、年齢が70歳になったため年齢階層別の最高限度額に引っかかり、「13,314円(令和5年8月現在)」に引き下げられて計算されるようになった
【給付基礎日額】のまとめ
「平均賃金」はその負傷や疾病について一度決定されたらその後は変わることは基本的にないけど、「給付基礎日額」は給付されるときの基礎となるものだから、上がったり下がったりすることがあるということですね!
コメント
初めまして、給付基礎日額と平均賃金についての質問です。今年の4/1に入職し、6/17に仕事中に右足を骨折し、労災を使ってお休みを頂いています。会社より書類(5号・8号・7号)を貰い、労災指定の病院に5号用紙を出して病院での支払いはありません。お休みは7/31迄頂く予定です。
7号用紙は移送費の請求に使用する予定です。
7/31の後に病院に8号用紙の病院の記入欄に記入して貰い提出する予定なのですが、会社より貰った書類の中に平均賃金算定内訳書がなく、8号用紙の裏面の平均賃金記入欄と所定労働時間欄を未記入で提出する様にと言われました。入職して賃金の支払いが3ヶ月未満だからでしょうか?
6月分の給料は振込まれましたが、コレにも関係しているのでしょうか?送られて来た明細には、6月末締め、7/15支払いとありました。(月末締め、翌月15支払い)
このままだと不備で労災の休業補償はおりないと思うのですが、会社に確認した方が良いのでしょうか?入職したばかりでどの様に会社と話して良いか判らず、こちらでアドバイスを頂けたらと思いメールさせて頂きました。宜しくお願いします。
コメントありがとうございます。
お話いただいた内容ですと、平均賃金の算定期間は「4/1〜4/30」「5/1〜5/31」の2ヶ月間だけになります。この算定期間は雇入日や負傷日、賃金の締切日などで自動的に決まるものですので、ご心配されている入職3ヶ月未満だからですとか6月分のお給料とかはおそらく関係がないと思います。
また、もしそのまま労基署に提出したとすれば、おっしゃるとおり不備になり、請求書が返戻されるか、追加の提出の指示があります。書類が整うまでは休業補償の支払いはされません。
確認なのですが、請求書に事業主の証明は既にされている状態なのでしょうか?
7/31までお休みされるとのことですので、本来であれば、事業主の証明も含め、8月になってから書類の作成を開始するのが一般的です。ですので、もしかしたらそれまでに平均賃金算定内訳を会社で用意する予定になっているということはないでしょうか。もしくは、病院で証明をもらったら、一度書類を会社に戻してねという話になっているとか…。そのへんのことは事務処理上の話になりますので、不明点は言い出しづらかったとしても会社に確認されることをおすすめいたします。不備になってあとで会社に迷惑をかけるより、予め解消しておいた方が良いと思いますよ(^o^)
早い回答ありがとうございます。請求書の事業主の証明は頂いているので、病院で証明を貰ったら会社に連絡して確認してみます。入職3ヶ月未満は関係無いと分かりホッとしました。
安心していただけて良かったです。
お大事にしてください。
こんにちは。初めまして。
平均賃金の計算について、当方は「30日締め当月末払い」の給与支給形態となっており、残業代や休日出勤手当、夜勤手当等は翌月払いとなっております。
その場合の残業代や休日出勤手当等(以下 変動給)について、
2020年11月~2021年1月が平均賃金の計算期間である場合、例えば11月でしたら
固定給 ✚ 11月支払い分変動給(10月勤務分)
固定給 ✚ 12月支払い分変動給(11月勤務分)
上記のどちらで計算を行ったらよろしいのでしょうか…?
労災の待期期間の計算を行うのが初めてで、いろんなサイトを拝見したり伺ったりしているのですが回答が分かれており困っています。
お手数ですが、お時間のある時にご教授いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
しめじ 様
コメントありがとうございます。
結論から先に申し上げますと、「固定給 ✚ 12月支払い分変動給(11月勤務分)」になります。
「11月1日〜11月30日」でしたら、あくまでもその期間の実績分を記入することになりますので、変動給については12月末に支払われる金額を記入することになります。労働日数についても同様で、11月に働いた日数を記入することになります。
ただ、一つ気になる点が…。
「30日締め当月末払い」とありますが、「末締め当月末払い」(変動給は末締め翌月末払い)という解釈でよろしいでしょうか??
例えば、2月1日に怪我をした場合、毎月30日で締めるとなりますと、平均賃金の算定期間は、「10月31日〜11月30日、12月1日〜12月30日、12月31日〜1月30日」のようになってしまいます。
お返事いただきありがとうございます。
ずっと悩んでいたのです助かりました…!
締めと支払日を逆にしてしまっておりました、すみません。
正確には「末締め当月30日払い」の給与支給方法となっております。
>しめじ様
そうだったんですね。解決してよかったです!
HANAさま
お世話になっております。
平均賃金を計算にするにあたり、質問させて頂きます。
当社では確定拠出企業年金制度があり、毎月の給与で27,500円を社員に支給しています。今回、業務中に負傷した社員はDCに加入しており、毎月5,000円を掛金として拠出しております。賃金台帳には、掛金の5,000円が記載されてなく、22,500円を支給しているような記載となっております。この場合の平均賃金の計算方法として、27,500円で平均賃金を計算するのか、それとも賃金台帳に記載されている22,500円とするのが妥当でしょうか。
HANAさまにお聞きするのが、見当違いかもしれませんが、ご教示頂けましたら幸いです。
>ねぎさん
コメントありがとうございます。
ちょっと難しくてよくわからないので…^^;少し質問させていただいてよろしいでしょうか。
1)確定拠出年金は「企業型」「個人型」どちらでしょうか?
2)5,000円のみ拠出して残り22,500円は本人が自由に使えるお金ということで現金支給しているということですか??
3)その場合、22,500円は何という名目で支給しているのでしょうか?所得税の対象となっていますか?
HANAさま
分かりづらいところがあり申し訳ありません。
1)企業型になります。
2)その通りです。22,500円は給与支給しております。
3)ライフプラン支給金という項目で支給しております。拠出している5,000円は所得税、社会保険料の対象外となります。
どうぞ、よろしくお願い致します。
>ねぎさん
ご回答いただきありがとうございます。
自信がないところがありまして知り合いの職員に連絡してみたのですが、これだけの情報では確定できないとのことでした。
ここからはあくまで私の個人的見解になるのですが、おそらく5,000円は平均賃金の算定に含まれず、22,500円は労働の対価とみなされて含めるということになりそうな気がしますが、間違っていたら申し訳ありませんので、管轄の労基署にしっかりと確認してみることをお勧めいたします。
その際、賃金台帳とライフプラン支給金の概要等が書かれた賃金規定等のコピーを持参すると良いかもしれません。お力になれず申し訳ございませんm(_ _)m
HANAさま
お知り合いの方にまでご連絡して頂き、誠にありがとうございました。
労基署に問い合わせるのが躊躇われ、ついついHANAさまにお聞きしてしまいました…
労基署に確認してみます。
いつも、HANAさまのサイトを参考にさせて頂き、大変助かっております。
また、何かありましたら、よろしくお願い致します。
HANAさま
お世話になっております。
基本的なことでお恥ずかしいのですが、質問させて頂きます。
様式8号と8号の別紙1を労基署に提出する際は、賃金台帳や出勤簿は添付する必要はあるのでしょうか?
また、様式8号等を送付する際、コピーを同封すれば受付印を押印したものを返送して頂けるのでしょうか?様式23号はそのようにしたのですが…
ご教示頂けますと幸いです。よろしくお願い致します。
>ねぎさん
コメントありがとうございます。
>賃金台帳や出勤簿の添付
添付しなければならないという決まりはありません。事業主が正確に把握して報告するという大前提があるからです。ですので添付されていなくても労基署は文句は言えません。
でも、現実問題として判断が難しい事例も多くあり、実際間違って提出されるものも相当数あるため、書類の添付をお願いして正確性を確認しているという側面があるかと思います。
>コピーへの受付印
コピーと返信用封筒を同封すれば、ほとんどの労基署が受付印を押して返送してくれるはずです。
※いずれのご質問も決まりがあるものではありませんので、都道府県などによって異なる可能性があることをご了承願います。
HANAさま
お世話になります。
ご回答頂き、ありがとうございました。
関係する社内例規も申請の初回は添付した方がよさそうですね。
賃金台帳、出勤簿、社内例規を添付して送付するようにします。ありがとうございました。