休業補償の最低保障額は?

質問

休業補償の最低保障額や計算方法について教えてください。
平均賃金は賃金の総額を暦日数で割って算出しますが、実労働日数が少ない場合は平均賃金が安くなってしまうような気がします。

答え

労災保険の給付基礎日額や平均賃金には「最低保障」の制度があり、賃金の最低水準が考慮されたり、金額が不当に低くならないように平均賃金が引き上げられています。

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下でくわしくお話するよ!

休業補償などの給付基礎日額の最低保障額について

労災保険から休業補償や障害補償、遺族補償などが給付されるとき、支給金額の計算の基礎となっているものが給付基礎日額です。

この給付基礎日額には、労災保険の給付において最低限度の水準を確保する必要があるという考え方により、最低保障額が設定されています。

この最低保障額は、世の中の賃金水準が考慮されて毎年変動しており、令和5年8月現在の最低保障額は「4,020円」です。(令和5年8月1日以降適用)

管理人
管理人

最低保障があるというのは助かりますね!
さらに、これとはまた違う「最低保障」の制度がありますので、紹介しますね。

休業補償などの平均賃金を計算するときの最低保障とは?

平均賃金は、通常、けがをする前の3か月間に労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割ったもので算出することになっています。

この場合、「月にいくら」と給料が決められている「月給制」の人は、実労働日数の多い少ないに関わらず平均賃金にそれほど変動はありませんが、「日給」の人や「時間給」の人はそうはいきません。

たとえば、学生さんや主婦などのパートやアルバイトの場合、月の所定労働日数が10日間程度しかないということも普通にあります。

この場合、単純に3か月間の賃金を暦日数で割って算出してしまうと、平均賃金(1日あたりの単価)が著しく低くなってしまいます。

そこで、そうならないように、通常どおり暦日数で割って計算した金額が、一定の金額に満たないときは、下の計算方法によって計算された「最低保障平均賃金」が採用されることになっています。

最低保障の計算になる人ってどんな人?

最低保障は、労働日数によって賃金が変動する場合を想定した制度ですので、賃金が完全に月定額で固定されている人は関係ありません。

賃金の全部または一部が日給時間給出来高払制請負給などによって支払われている人で、実労働日数が少なめな人(労働日数が暦日数の6割程度以下の人)が、最低保障平均賃金の適用があります。

最低保障平均賃金の計算方法

では、実際に最低保障額がいくらになるのか、事例を見ながら計算してみましょう。

「賃金の全てが日給・時間給・出来高払制・その他請負制によって支払われている場合」と、「賃金の一部が月給制によって支払われている場合(※)」に分けてご説明いたします。

※「基本は時間給だけど、通勤手当だけは月定額で支払われている」といったようなケースです。

賃金の全てが日給・時間給などで支払われている場合の最低保障の計算

算定期間の3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の実労働日数で割った金額の60%が最低保障平均賃金になります。

【例】
平均賃金の算定期間が、5/1〜5/31、6/1〜6/30、7/1〜7/31の3か月間で、各月の労働日数と賃金は以下の場合で計算してみます。
(日給1万円 通勤手当1日100円)

5月
労働日数 10日
賃金 基本100,000円 通勤手当1,000円
6月
労働日数 15日
賃金 基本150,000円 通勤手当1,500円
7月
労働日数 13日
賃金 基本130,000円 通勤手当1,300円

通常の平均賃金は、算定期間中の総賃金を暦日数で割ったものになります。
 383,800円÷92日=4,171円73銭

最低保障平均賃金は、算定期間中の総賃金を実労働日数で割った金額の60%になります。
383,800円÷38日×60%=6,060円00銭

通常の平均賃金<最低保障平均賃金となりますので、この場合、最低保障の「6,060円00銭」が採用され、この金額をもとに休業補償などが支給されます。

賃金の一部が月給制で支払われている場合の最低保障の計算

通勤手当や家族手当が月定額支給で、それ以外の基本給などが日給や時間給といったような場合の最低保障の計算方法です。

この場合は、月給部分と、日給や時間給の部分に分けてそれぞれ計算し、その合算が最低保障平均賃金になります

月給部分については、通常どおり算定期間中に支払われた月給部分の総額を、その期間の暦日数で割ったもので算出します。

日給や時間給部分は、算定期間中に支払われた日給や時間給部分の総額を、その期間の実労働日数で割り、60%をかけて算出します。

【例】
平均賃金の算定期間が、5/1〜5/31、6/1〜6/30、7/1〜7/31の3か月間で、各月の労働日数と賃金は以下の場合で計算してみます。
(日給1万円 通勤手当 月2,000円)

5月
労働日数 10日
賃金 基本100,000円 通勤手当2,000円
6月
労働日数 15日
賃金 基本150,000円 通勤手当2,000円
7月
労働日数 13日
賃金 基本130,000円 通勤手当2,000円

通常の平均賃金は、算定期間中の総賃金を暦日数で割ったものになります。
 386,000円÷92日=4,195円65銭

最低保障平均賃金は、月給部分と日給部分に分けて計算し、その合算額になります。
(月給)6,000円÷92日=65円21銭
(日給)380,000円÷38日×60%=6,000円00銭
65円21銭+6,000円00銭=6,065円21銭

通常の平均賃金<最低保障平均賃金となりますので、この場合、最低保障の「6,065円21銭」が採用され、この金額をもとに休業補償などが支給されます。

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管理人

労災保険では、労働日数が少なくて不当に平均賃金が安くならないように「最低保障」というのが定められているんですね。
ちなみに、最低保障が「一労働日あたりの60%」となったのは、通常の場合、稼働状況が最も悪い事業であっても1か月のうち18日は働くという事実が根拠になっているようです。

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